天地始粛|てんちはじめてさむし|2023年|はっさく|秋の七草

歳時記
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天地始粛 てんちはじめてさむし

9月15日は農家の方々の三大厄日のひとつ「八朔」が巡ってきます。
そして28日より七十二候は、処暑の次候「天地始粛(てんちはじめてさむし)」と移ります。
未だ残暑厳しく、猛暑日を観測する地点も多くあり、正しく「秋」は暦の上だけといった様相です。
そろそろ「秋の七草」にも出会う頃が近づいてまいります。

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八朔(はっさく)

八朔(はっさく)とは八月朔日つまり8月1日の略で、2023年の旧暦の8月1日にあたる日は9月15日が八朔(はっさく)です。
余談になりますが、八朔(はっさく)といえば柑橘類の「はっさく」が思い浮かびます。
それは、ちょうどこの時期に食べられるようになることからその名がつきました。

さて本題に話を戻しますが、旧暦ではこの頃、稲穂が実り始める大切な時期ですが、と同時に台風が襲来することも多く、せっかく実った作物に被害が及ぶこともあり、農家にとっては二百十日(令和5年は9月1日)、二百二十日(同9月11日)と並んで三大厄日のひとつともなっています。

また、「田の実の節句」とも呼ばれ、豊作祈願のお祭りを行って「田の実り」を願いました。

この「田の実」が「頼み」に転じ、八朔に日頃お世話になっている方々に贈答品を贈る風習が生まれました。農村では初穂をお世話になている方に贈ります。
京都の祇園では8月1日に芸妓や舞妓が華やかに着飾り芸事の師匠やお茶屋などに「おめでとさんどす、これからもよろしゅうおたのもうします」と挨拶回りをする風習が今でも残っています。

今年も京都は猛暑に見舞われ、芸舞妓さんたちも黒紋付の正装姿はさぞ大変だったことでしょう。

さらにこの時期に西日本を中心に「八朔祭」をする地方もあり、九州では熊本県上益城郡山都町の「八朔祭」は江戸時代中期ごろから約260年の歴史を持ち豊作祈願と商売繁盛を願うお祭りとして有名です。お祭りの見せ場は山野の自然の素材を活用した何体もの「大造り物」と呼ばれる山車が町内を引き廻されます。

令和5年度の八朔祭を4年ぶりに通常通りの祭り開催とすることで決定しました。日程は、9月2日(土曜日)と3日(日曜日)の2日間での開催です。

八朔 はっさく 八朔祭 熊本県山都町

町内各所を練り歩いた大造り物のゴール地点に近い「通潤橋」では五穀豊穣を願う「八朔祭」のフィナーレとして夜には花火大会も開催されます。
通潤橋は1854年この辺の住民と田畑を潤すために建造された美しい石造りのアーチ水路橋で、国の重要文化財にも指定されています。

通潤橋

天地始粛(てんちはじめてさむし)

今年は太平洋高気圧とチベット高気圧二段構造の気圧配置とエルニーニョ現象より今や「ニュースタンダード」ともいえる災害的な豪雨や気温が記録されています。

エルニーニョ現象とは、南米ペルー沖から太平洋赤道海域の日付変更線付近にかけての海面水温が平年より高くなり、その状態が1年ほど継続する現象のことで、12月頃に発生することから、地元のペルーでは「神の男の子」を意味する「エルニーニョ」の名で呼ばれるようになったそうです。

今年2023年のエルニーニョ現象は1997年に発生した過去最大のエルニーニョに迫るほどの規模になると予想されており、「スーパーエルニーニョ」の到来ともいわれています。

また日本付近で上空の気流(偏西風)が大きく蛇行し、そこに太平洋高気圧などが記録的に勢力を強めたことが原因で、太平洋高気圧も未だに真夏のような場所に居座り、天気図でもまるで梅雨末期のような気圧配置になってきています。
正しく「秋」は暦の上だけといった様相です。
「秋」を運んできてくれる太平洋高気圧とシベリア高気圧の鬩ぎあいの中で生ずる「秋雨前線」の出現はもうしばらくお預けのようです。
ただその秋雨前線は、「記録的」「観測史上」という言葉を冠した最近の豪雨で人的被害も出ることも多くなってしまっています。
さらに「二百十日(にひょくとおか)」を前にして本格的な「台風シーズン」ともなります。

さて、天地始粛の「」という漢字は縮むしずまるおさまるという意味の字だそうですが夏の気も落ち着き始める頃という意味です。

実際、残暑厳しいながら、気象情報などでは、北から「寒気」が南下してなどというアナウンスを聞くことも例年ですと徐々に増えてくる頃なのですが・・・

天地始粛 てんちはじめてさむし

沖縄でも例年とはうって変わり「熱中症警戒アラート」が連日のように発令されています
しかしながら、空を見上げれば入道雲の上空には秋を感じさせる雲も出始めてきて少しずつ秋に近づいていることを感じさせています。
ただ、大きな被害をもたらした台風6号や7号のような強い台風が接近する可能性もあり、油断は禁物です。近海の海水温が未だ下がらない現状では、いつ大きな災害をもたらす台風が来ても不思議ではありません。

秋の七草

話は換わりますが、春の七草と同様、秋にも七草があるのはご存知の方は多いと思います。
秋の七草」は選ばれたのは奈良時代で、平安時代に選ばれた「春の七草」より古い歴史があります。
春の七草は1月7日の「七草がゆ」がメジャーとなっていますが、「秋の七草」は一部食用とされるものもあったり、生薬となるものもありますが、一方で有毒成分が含まれているものもありますので、食べるより季節の移り変わりの風情を愛でる観賞に留めておく方が良さそうです。

そこで改めて秋の七草を以下にご紹介をしたいと思います。

女郎花 おみなえし オミナエシ

おみなえし 女郎花

オミナエシ(女郎花)の名前の由来は、「おみな」は「女」の意味し、「えし」は古語の「へし(圧)」で、美女を圧倒する美しさから名づけられたと言われています。 また別の説では、餅米で炊くご飯(おこわ)のことを 「男飯」といったのに対し、「粟ご飯」のことを「女飯」といっていたそうですが、花が粟つぶのように黄色く粒粒していることから「女飯」から「おみなめし」、「おみなえし」となった、という説もあります
その咲き方から、小さな花を粟に見立て、粟花(あわばな)とも呼ばれます。
その根には消炎作用があるといわれています。

尾花 すすき ススキ

すすき 薄 おばな 尾花

十五夜のお月見には欠かせないものですが、穂が出た状態を動物の尾に見立てて「尾花」といい、草が茂っている様子が「薄(ススキ)」と呼んでいます。
ススキは「茅(カヤ)」とも呼ばれ、これで葺いた屋根を「茅葺屋根(かやぶきやね)」といいます。
ススキの名はの由来は、稲などに似た草ススケが語源だという説や「すくすくと立つ木」という説や、はたまた神楽に使われる鳴り物用の木、スズの木という説もあるようです。
その根や茎には利尿作用があるそうです。

桔梗 ききょう キキョウ

ききょう 桔梗

あの清楚な紫色の花期は夏ですので、夏の着物のデザインによく使われています。
キキョウは、薬草としての漢名で根がひきしまっている、まっすぐであるという意味の「桔梗」を音読みした「キチコウ(キチカウ)」が変化したものと言われています。
その根は太く、喉に効くことから生薬として利用されることもあります。
また、キキョウ(桔梗)は昔から武士に好まれたようで、清和源氏の土岐氏や、土岐氏の流れを汲む「明智光秀」が水色桔梗紋を用いたことは有名です。
しかし残念ながら今や環境省の絶滅危惧種に指定されています。

撫子 なでしこ ナデシコ カワラナデシコ

なでしこ 撫子

万葉の時代から優しい草姿に可憐な花を咲かせ、香りも魅力的な撫子は「撫でし子」と語意が通じることから、古くから子どもや女性にたとえられてきました
また愛児を失った親が、その子の愛した花を形見として撫でたことにも由来しているという説もあり、別名「片身花」ともいいます。
平安時代に日本に自生する日本古来の「河原撫子(カワラナデシコ)」とよく似た石竹(せきちく)が中国から入ってきたため、在来種と区別するため「唐撫子」と呼ばれていました。それに対して在来種の「河原撫子(カワラナデシコ)」の別名として、日本女性の代名詞「大和撫子」と呼んでいました。ちなみにサッカー日本代表女子の「ナデシコジャパン」の愛称ともなりました。

藤袴 ふじばかま フジバカマ

ふじばかま 藤袴

名前の由来は、、花の色が藤色を帯び、花弁の形が袴のようであることから、「藤袴」の名が生まれたとも言われ、また、フヂバナカフクミグサ(藤花香含草)の意味とも言われています。
そのため、乾燥させると香りが強く、桜餅のような香りがするため、平安時代の貴族たちは湯に入れたり、衣服や髪につけていたと言われています。
七草の中で最も目にする機会が少なく、キキョウと並んで絶滅危惧種ともなっています。

葛 くず クズ

くず 葛

茎で籠や布を織り、根から採取したでんぷんがくず粉となるのはご存じの方も多いと思います。
その「葛」という名前の由来は、大和の國(現在の奈良県あたり)吉野郷国栖(くず)という地名に由来すると言われています。
昔、この地域で葛を掘り出し精製され、国栖の人が、この植物を売り歩いたため、いつしか「クズ」と呼ばれるようになったという説が有力なようです。
落語でも有名な風邪薬(万能薬?)の「葛根湯」はこの葛の根を乾燥させたものです。
そのくず粉を原料とした和菓子、葛餅、水まんじゅうや葛切りが有名で透明感のある上品な甘さが特徴です。

萩 はぎ ハギ

はぎ 萩

草冠に秋と書く「萩」は、秋に咲く花という意味だそうです。その花は小さく紅紫色です。
萩は古い株から目を出す特徴があり、そのため、かつては「生芽」という漢字があてられていました。
この漢字で「ハエキ」と読んでいて、その読み「ハエキ」が訛って現在のハギになったという説が有力のようです。
その小さな花の咲き乱れる様が小豆の粒に似ていることから、秋のお彼岸にお供えする「おはぎ」の由来になったとされています。
萩の中でも「ミヤギノハギ」は宮城県の県花となっています。

秋の七草の覚え方

秋の七草を諳(そら)んじられる方は、それほど多くないでしょう。そこで秋の七草の覚え方をご紹介します。

まずは「春の七草」の「せり・なずな ごぎょう・はこべら ほろけのざ すずな・すずしろ」というように五七調で覚える方法です。
秋の七草では「はぎ・ききょう・くず・おみなえし・ふじばかま おばな(すすき)・なでしこ
この覚え方も、繰り返し口ずさむことによって、自然と口をついて出てくるようです。

別の方法としては「お好きな服は?」の頭の一文字を覚えると良いそうです。

「お」   おみなえし
「す」   すすき(おばな)
「き」   ききょう
「な」   なでしこ
「ふ」   ふじばかま
「く」   くず
「は」   はぎ

いずれにしても、これから褐色に染まってくる秋の野にひっそりと清楚で可憐に咲く「秋の花々」を愛でる気持ちと季節感を味わう心とともに持って、覚えやすい方法で覚えてみたらいかがでしょうか。

秋の七草の由来

さてこの「秋の七草」の由来ですが確定的ではないようですが、一応、山上憶良(やまのうえのおくら)が「秋野に咲きたる花を指折り(およびおり)かき数ふれば七種(ななくさ)の花」(万葉集巻八1357)、「萩の花、尾花(おばな)、葛花(くずばな)、撫子(なでしこ)の花、姫部志(をみなえし)また藤袴(ふじばかま)、朝貌(あさがほ)の花」(万葉集巻八1538)という歌を詠んだのが由来とされています。
この「朝貌の花」については、木槿(むくげ)、桔梗、朝顔など諸説ありますが、現在では「桔梗(ききょう)」であろうという説が最も有力な説となっています。

結詞

暑さも少しずつ和らぎ、穏やかな気持ちで可憐で清楚な花を愛でられる秋の日々が戻ってくることを願いたいものです。

禾乃登 こくものすなわちみのる

暦は七十二候は処暑の末候「禾乃登(こくものすなわちみのる)」と移ります。

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