橘始黄|たちばなはじめてきばむ|2023年|ポン酢|鱈|師走

橘始黄 たちばなはじめてきばむ 歳時記
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橘 橘始黄 たちばなはじめてきばむ

カレンダーも残り一枚、いよいよ「師走」、精神的には何かと気ぜわしくなってきます。
と同時に、体感的にも冬本番に向っていることを感じます。
暦は2日より七十二候も小雪の末候「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」となります。

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橘始黄(たちばなはじめてきばむ)

七十二候が小雪の末候に変わり、橘の実が黄色く色づき始める頃となります。

この橘(たちばな)とは、日本固有の柑橘類の『ヤマトタチバナ』を指しているそうですが古くは柑橘類の総称する語として使われていました

この橘は一年中緑色の葉をツヤツヤと茂らせていることから「いつも変わらない永遠の象徴」として、めでたいものと扱われ宮中などにも植えられてきました。
それ故か家紋や勲章のモチーフとして多く用いられてきています。文様としては平安時代末期より現れ、江戸時代には90あまりの旗本が用いていたようです。

家紋 橘

橘と言えば「左近桜」「右近橘」という言葉が頭に浮かんできます。特に3月の雛祭の段飾りの飾りつけの時などどちらに置くか悩むものの一つでしょう。
この左近桜、右近橘は京都御所の「紫宸殿」の正面左右に植えられているものを表しています。

京都御所

京都御所は京都市上京区にあり現在では京都観光のスポットともなっていますが、平安遷都(「鳴くよ鶯平安京」で暗記された方も多いと思いますが延暦13年、794年)から明治なるまで南北朝時代ですら北朝側の内裏として悠久の歴史を刻んできました。
以前は春秋の数日間のみの一般公開でしたが2016年からは事前予約なしに原則月曜日以外の通年公開となっています。

右近の橘 平安神宮
画像は平安神宮

さて前述の「右近橘」ですが入場門である清所門から入り順路に従って「承明門」へと進みます。
その承明門より紫宸殿を望むと紫宸殿正面左に植えてあるのが「右近橘」です。
「えっ?左右逆?」と思われた方もおられるかもしれませんが、位置はあくまでも天皇から見ての右左です。

橘(たちばな)

橘 たちばな タチバナ

では「橘」についてもう少しお話ししましょう。

先にも書きましたが「橘」は食用柑橘類の総称でもあるので、ここではヤマトタチバナ大和橘)・ニッポンタチバナ日本橘)について書いていきます。
ヤマトタチバナは古くから自生している日本固有の唯一の柑橘絶滅危惧種に指定され、萩市に自生しているものは天然記念物にも指定されている常緑小高木です。

古事記、日本書紀には第11代天皇とされる垂仁天皇が田道間守たじまもりたぢまもり)を海の彼方の理想郷とされていた「常世の国とこよのくに)」に遣わして「非時香木実ときじくのかぐのこのみ)」と呼ばれる不老不死の霊薬を持ち帰らせたという話が載せられています。

そのことより橘は「常世草とこよぐさ)」とも呼ばれ不老長寿や永遠の繁栄の象徴とされることになりました。
また、一説には「田道間守花(たじまはな)」から転じて人々に「たちばな」と呼ばれるようになったともいわれています。

5月~6月の初夏には小さく可憐な5弁の白い花が爽やかな香りを放ち、その実は秋から冬にかけて黄色く熟します。

一見私たちが日ごろ食しているミカンを小振りにした感じですが、とても酸味が強くそのままでは食べられたものではありません。
そこで「虹蔵不見」の候に書いた夏みかんと同様に酢の代用品としてや、昨今ではマーマレードやジャムとして食されています。

ポン酢

ポン酢

橘同様、橙、柚子などの酸味が強くそのまま食すには向かない柑橘類の利用法として酢の代用品として利用すると書きましたがその最たるものが「ポン酢」ではないでしょうか。
そこで自家製ポン酢の作り方を・・・

レシピ

・ 果汁(皮を剥いてから絞る)1/3カップ
・ 醤油1/2~1/3カップ(お使いの醤油により加減してください
・ 酒1/4カップ
・ みりん1/4カップ
・ 昆布7cmほど
・ かつお節10g

作り方

  1. 酒・みりんを鍋に入れ沸騰させて煮切る
  2. 火を止め昆布・かつお節を加える
  3. 醤油と果汁を種ごと加える
  4. 10分ほど置いてからペーパータオルなどで漉し、しっかりと絞り出す
  5. 熱湯消毒した清浄な保存容器に移し、冷蔵庫で保管する

*早めに使い切るようにしたいものですが、概ね数週間は保存できるようです

鱈(たら)

鱈 たら タラ

手作りポン酢を使ってと言えばやはり鍋物。
前候の「朔風払葉」で鍋の主役は「白菜」と書きましたが、さらに定番と言えば「鱈(たら)」ではないでしょうか。

そこで「鱈」についての蘊蓄もご披露しておきます。

江戸時代に人見必大によって日本の食物全般について書かれた「本朝食鑑ほんちょうしょっくかん)」には「鱈は初雪の後に獲れる魚ゆえ雪に従う」とあります。
このように鱈は季節の到来を告げてくれる魚です。

通常「鱈」といえば「マダラ」を指しますが日本近海ではその他に「スケトウダラ」や「コマイ」が多く漁獲されています。
一般に「タラコ」と言われているのはスケトウダラの卵のようです。

その身はご存じの通り脂肪が少なく柔らかい白身で鍋料理はもちろんのこと干物、揚げ物、塩蔵品、練製品など多種多様に利用されています。

ちなみに鱈は漢字で「大口魚」と書かれることもあり、魚の中でも大食漢でそれ故「タラ腹食う」の語源になったという説もあります。

師走

師走

「師走」は本来陰暦(旧暦)の12月の和風月名ですが、陽暦(新歴)が採用されている現在でもそれを当て嵌めて使っています。

その「師走」の意味・由来ですが、諸説ありその中でも、もっとも有名な説は、師匠である僧侶が、毎年年末に行われる仏名会(ぶつみょうえ)という法要でお経をあげるために東西を馳せる月という意味の「師馳す(しはす)」だというものです。
ちなみにその仏名会とは歳末に仏さまや菩薩(ぼさつ)の名を唱え、その年にしてしまった様々な罪に懺悔(ざんげ)し、身も心もきれいになるように祈念する法要のことを言います。

他にも、年が果てる(終わる)という意味の「年果つ(としはつ)」が「しはす」に変化したという説、万葉集のころから「シハス」と呼ばれていたとの説、さらには、四季の果てる月を意味する「四極(しはつ)」を語源とする説、一年の最後になし終えるという意味の「為果つ(しはつ)」を語源とする説など様々です。

さて、12月も、他にも呼び方があります。

極月(ごくげつ、ごくづき)」、「窮月(きゅうげつ)」、「限りの月(かぎりのつき)」など1年の最後の月の意味の呼び方や、大晦日の晩を「除夜(じょや)」と呼ぶのと同じで古い年を除くという意味で、「除月(じょげつ)」とも呼ばれています。

いずれにしても1年の終わりであると共に、新しい1年に思いを馳せる月でもあることが感じられます。

結詞

このようにカレンダーはいよいよ「師走」。
今年は新型コロナウィルス禍は幾分収束しているようにも感じられますが、インフルエンザやプール熱など昨年までコロナの感染対策により鳴りを潜めていた感染症の懸念もあり、またこれからの時期、忘年会・新年会、そして年末年始の帰省など、何かと人が集まる機会が増える時期でもありますので、個人が出来る感染症対策には留意していきたいものです。

気温の寒暖も激しい時節ですが、部屋の換気などにも心掛けて、体調にはくれぐれもご用心ください。

大雪 たいせつ 閉塞成冬 そらさむくふゆとなる

暦も二十四節気は「大雪」そして七十二候は「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」に移っていきます。

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