半夏生|はんげしょうず|はんげしょう|カラスビシャク|2023年

歳時記
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半夏生 はんげしょうず はんげしょう

和風月名も水無月(みなづき)から文月(ふみづき・ふづき)と変わり、七十二候も2日より夏至の末候・半夏生(はんげしょうず)となります。この半夏生は雑節のひとつでもあり、その場合は「はんげしょう」と読みます。
「雑節」は日本独自の暦で、「彼岸」のほか「節分」「八十八夜」「土用」「二百十日」などがあります。

この記事では、主に七十二候の「半夏生(はんげしょうず)」を中心にお話を進めていきます。

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半夏生(はんげしょうず)

半夏生 はんげしょうず

半夏生(はんげしょうず)とは半夏が生える時期という意味で、その半夏とは「烏柄杓(カラスビシャク)」というサトイモ科の薬草で、地中の球茎の皮を除いた部分を乾燥させたものが漢方薬となります。
ちょうどこの時期、山野や田畑のあぜ道などに生えてきます。
またこの時期は昔から夏至の後、半夏生に入る前には田植えを終わらせるものとされ農作業の大事な節目の時期とされていました。
そのため、この七十二候の「半夏生(はんげしょうず)」から名前を採り、時期も同じ雑節の「半夏生(はんげしょう)」が生まれました。
雑節ですから「半夏生(はんげしょう)」は夏至から11日後から、次回お伝えします「七夕(しちせき)」の節句の前日までと決められています。

半夏雨 はんげあめ 豪雨

例年ですと梅雨末期は各地で集中豪雨「半夏雨(はんげあめ)」が心配される時期でもあり、その大雨から洪水被害(半夏水)まで起こしてしまうこともありました。
*防災情報については「夏至・乃東枯」の記事に載せてありますので、よろしければご一読ください。

田植え

農事の「半夏半作」ということわざにあるように、この時期以降に田植えをすると秋の収穫は生育が間に合わず半減してしまうことから、半夏生以降は田植えを行わないようにしていたそうです。
そのために、「この日までには田植えは終わらそう」という目安・目的で雑節として半夏生を設けました。
この日から7月7日の「七夕」頃までの5日間は休みとする地方もあります。

半夏・烏柄杓(カラスビシャク)

半夏生の冒頭でも書きましたが、「半夏」は烏柄杓(カラスビシャク)という植物の別名です。
他の別名では「狐のろうそく」、「蛇の枕」とも呼ばれ、画像をご覧いただくとお分かりいただけると思いますが奇妙な形をした植物です。

半夏 カラスビシャク

このカラスビシャクは田畑にとっては雑草でしかなく、しかも地上に出ている茎を採っても地中にある球茎が残っている限り、また生えてくるので完全に取り除くことは難しかったようです。
そしてこのカラスビシャクは北海道から沖縄まで日本全国どこにでも分布しています。

半夏とヘソクリ

いきなりヘソクリの話かと思われた方もおられたと思いますが、実は「ヘソクリ」の由来はこの半夏と密接に関係しています。

へそくり

漢方薬となる烏柄杓(カラスビシャク)の球茎から茎が取れた跡がおへそのように窪んでいたので「ヘソクリ」と呼んでいました。むかしの農家の人たちは農作業の合間に田畑にとっては雑草であるカラスビシャクを根絶するためにその球茎を掘り、貯めて薬屋に売って臨時収入を得ていたことが、現在の秘かにお金を貯める「ヘソクリ」の語源となっているようです。

半夏

半夏生(植物)

半夏生 片白草

ここでややこしいのは「半夏生(はんげしょう)」という植物もあるということです。その半夏生は、暦の中の「半夏」とは全く別の植物で本州以南に自生するドクダミ科の多年草です。主に水辺や湿地に自生し穂のような白い花を咲かせます。
半夏生(はんげしょうず)の頃に花を咲かせることから、その名が付いたという説や、葉の一部を残して白くなることから「半化粧」から名がついたという説があります。さらには葉の片側だけが白くなることから「片白草(カタシログサ)」という別名も持っています。

半夏生の食文化

土用の鰻のように半夏生の行事食もあります。地域によってであったり、うどんであったり、小麦粉ともち米を混ぜて餅にしたものだったりしますが、関西地方では「蛸(たこ)」を食べる習慣があります。最近では徐々に全国化していると感じます。
何故「蛸(たこ)」かというと、田に植えた苗が、タコの足のようにしっかりと根付くようにとの願いを込めたもののようです。

蛸の刺身

蛸にはタウリンという栄養ドリンクなどに含まれる成分も含まれているそうで、田植えなどに忙しかった体には、滋養の為、理にかなっている食材とも言えます。

半夏生の物忌み

この半夏生の間は、物忌みの日となり、日頃の労働を控え、静かに以後の豊作を祈りながら静かに過ごす日とされてきました。その理由として地方ごとに様々な伝承があります。
半夏の球茎は生では毒であることに由来しているのか、「空から毒が降ってくるから井戸に蓋をしておけ」とか、「その日に採れた野菜は食べるな」とかとかいろいろありますが、今風に考えてみると大雨が降りやすいこの時期は、地下水の水質が変化したりとそれなりの理由も考えられます。
しかしながら、究極的にはそれまで麦の刈り取り脱穀、そして田植えと忙しかった体を休め暑い夏の農作業に向けて鋭気を養っておけという戒めだったのではないでしょうか。
それが半夏生の食文化にも通じているような気がしてなりません。
また、平安時代には陰陽道により物忌みが多く行われ、貴族などは物忌み中は大事な用事があっても外出を控えていました。物忌み中の人は家門を閉ざして、訪客が来ても会わず、行事にも出席しませんでした。

結詞

「物忌み日」の貴族たちの過ごし方を書きましたが、なんだか新型コロナウィルスの感染予防対策のステイホームと少し似ているような気がします。
今年の夏も暑くなりそうですが、熱中症予防対策で、外出を控えたり、ご自身のペースでご自宅で過ごすということは、古来より引き続き大事な知恵なのかもしれません。
しかしながら、現代では物価や電気代の高騰でステイホームでも一苦労してしまいそうです。

七夕

暦は7日より二十四節気「小暑(しょうしょ)」・七十二候「温風至(あつかぜいたる)」と移ります。そして五節句の一つの「七夕」を迎えます。

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