九州八十八ヶ所百八霊場 第六十九番札所 黒髪山 西光密寺

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九州八十八ヶ所百八霊場
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西光密寺は古来より山岳信仰の霊山として名高い黒髪山のほぼ頂上にあります。弘法大師が遣唐使船が平戸係留の間に無事の渡航を祈念して黒髪山に登られ、帰朝の後にお礼参りのため再び登られ不動明王を爪彫りされ安置されたのが寺の始まりと伝えられています。

九州八十八か所百八霊場~九州を周る「心巡り」の旅~より

『概略』

黒髪山 西光密寺
(御朱印)

創建

大同元年(806年) 弘法大師

宗派

真言宗大覚寺派

ご本尊

薬師如来坐像(九州八十八ヶ所百八霊場ご本尊)
(お御影)

十一面千手観音坐像

阿弥陀如来坐像

ご真言

薬師如来

おん ころころ せんだり まとうぎ そわか

十一面千手観音

おん ばざら たらま きりく

阿弥陀如来

おん あみりた ていぜい から うん

薬師如来について

薬師如来は、正しくは薬師瑠璃光如来といいます。
日光菩薩、月光菩薩の脇士と十二神将が一体となって、仏の心「慈悲の心」を表しています。即ち、私たちの病気の苦しみを除いて、安楽を与えてくださる現世利益の「ほとけさま」です。
薬師如来が説法している時の手の相(印相)、右手は施無畏印で、わたしたちの色々と恐れおじる心を取り除き、安心させてくれるサインです。
痛いところへすぐ右手が飛びます。これが「手当て」です。手の指には仏の世界でいう仏の名があり、薬指が薬師如来です。施無畏印で薬指を少し前に出すことで薬師如来を象徴しています。

左手は与願印で、平安時代以後の薬師如来は薬壷を持っておられます。
くすりつぼは、人の寿命を延ばす意味をもつといいます。現代人は薬によって病気が治ると頼りがちでありますが、病気を治すのは、私たちの体内にある自然治癒力が最も肝心です。

医療や薬品は、その自然治癒力を高め、援助する役割を持つのであります。「病は気から」とも言います。この治すという「気力」をバックアップしてくれるのが、お薬師様です。
私たちが病気になったとき、その病気をおそれず、医薬の効果を高め、強く生きる力を与えてくださいます。その上に、「病気の善用」も諭していただけるのです。
お薬師信仰を深めることは、健康で、病気を苦にすることなく、安楽で、幸せな日暮らしが期待できるのです。

病の苦しみを救う、寿命を延ばす、そして貧困からの救済等々十二の大願を成就して如来となられた仏様です。
尊像は病気平癒や延命を願って作られたものが多いため、左手に万病に効く薬が入っている薬壺(やっこ)をお持ちになっておられます。
また薬師像は三尊像としてお祀りされることも多く、その際は脇侍に日光・月光菩薩の二尊が従われることが多く、さらに眷属として十二神将も従えることもあります。

薬師の十二大願

1.光明普照
 自らの光で三千世界を照らし、あまねく衆生を悟りに導く
2.随意成弁
 仏教七宝の一つである瑠璃の光を通じて仏性を目覚めさせる
3.施無尽物
 仏性を持つ者たちが悟りを得るために欲する、あらゆる物品を施す
4.安立大乗 
世の外道を正し、衆生を仏道へと導く
5.具戒清浄
 戒律を破ってしまった者をも戒律を守れるよう援ける
6.諸根具足
 生まれつきの障碍・病気・身体的苦痛を癒やす
7.除病安楽 
困窮や苦悩を除き払えるよう援ける
8.転女得仏
 成仏するために男性への転生を望む女性を援ける
9.安立正見
 一切の精神的苦痛や煩悩を浄化できるよう援ける
10.苦悩解脱
 重圧に苦しむ衆生が解き放たれるべく援ける
11.飽食安楽
 著しい餓えと渇きに晒された衆生の苦しみを取り除く
12.美衣満足
 困窮して寒さや虫刺されに悩まされる衆生に衣類を施す

阿弥陀如来について

阿弥陀如来は、無限の寿命を持つことから無量寿如来または無量光如来と漢訳されています。『無量寿経』には 「諸仏の中に於いて光明最尊第一にして、この光にあう者をして一切の苦から免れしめる」 と無量の光明の徳無限の慈悲が説かれています。
限りない光(智慧)と限りない命を持って人々を救い続けるとされており、西方極楽浄土の教主です。
四十八願(しじゅうはちがん)という誓いを立て、その中には「南無阿弥陀仏」と唱えたあらゆる人々を必ず極楽浄土へ導くとあり、広く民衆から信仰されました。
ちなみに他力本願も四十八願の誓いから来ており、本来は阿弥陀様にすがって極楽に行こうという意味です。
仏像では、阿弥陀三尊として聖観音と勢至菩薩と並ぶ姿が多いです。
さらに二十五菩薩を従え、雲に乗って往生者を迎えにやってくるともいわれ、その来迎の様子をあらわす場合もあります。

真言密教で表される阿弥陀如来は、衆生の宗教的素質がどのようなものかを妙(たえ)に観察し、 真理の教えを説いて疑惑を断じ、衆生にその本性が清らかで蓮華のようであることを知らしめる 大日如来の妙観察智の徳をつかさどる仏です。つまり大日如来の徳の一つを阿弥陀如来が受け持っているわけです。

十一面千手観音について

別名 千手千眼観自在菩薩(せんじゅせんげんかんじざいぼさつ)とも言い、生きとし生けるものすべてを漏らさず救う、大いなる慈悲を表現する菩薩です。千の手と手のひらの千の眼によってどんな願いも見落とさず、悩み苦しむ衆生を見つけては手を差し伸べる広大無限な功徳と慈悲から「大悲観音」、または観音の王を意味する「蓮華王」とも称されます。
蓮華王とは泰三界曼荼羅で観音が配される場所である「蓮華部」の中で、最高位となっています。
阿修羅や金剛力士などが属する二十八部衆を配下とします。

千手観音は、人々を救うための手が多い分、得られるご利益も多いと考えられています。そのため、災難除け、病気平癒などあらゆる現世利益を網羅しているのです。
そのご利益です。
厄災厄除・苦難除去・病魔退散・悪疫守護・諸願成就・平穏無事・頭痛平癒・病気(難病)平癒・奇病快癒

さらに、夫婦円満や恋愛成就、安産や子宝成就にも功徳があるとされていて、後生善処(ごしょうぜんしょと読みます。亡くなったあと来世でも幸せに過ごせることを言います。)などのご利益もあります。

また六観音(聖観音・千手観音・馬頭観音・十一面観音・准胝観音または不空羂索観音・如意輪観音)の一つに数えられ餓鬼道に迷う人々を救うといわれています。
餓鬼道に生まれ変わる人は、生前に自己中心的な生活を送っていたり、欲望のままに生きていた人々で、ノドの渇きも潤せず、食べることが叶わないため渇きと餓えに苦しみ続けると言われています。

住所・連絡先

佐賀県武雄市山内町宮野黒髪山 TEL 0954-45-3162(定林寺)
(地図)

アクセス

JR佐世保線三間坂駅から西肥バス伊万里行、宮野下車、徒歩1時間30分(定林寺はバス停のすぐそば)
68番無動院から伊万里方面へ、山内町宿交差点を右折してすぐの右側が定林寺。その先に黒髪神社下宮があり、その手前横から黒髪山へ。
左手に石鳥居が見える黒髪山案内板のところを左折。
駐車場あり
納経所・定林寺 武雄市山内町宮野1024 0954-45-3162

ご詠歌

緑なす 名も黒髪の 岩陰に 大師の み跡ぞ 今にまします

修験の道場(第六十九番 西光密寺)

山号の黒髪山は修験の道場です。
延暦23年、弘法大師が入唐に際し登拝し海上安全と大願成就を祈願しました。

大同元年帰朝後、弘法大師は再び黒髪山に再び登り不動明王を爪彫り(爪刻不動明王【つまぼりふどうみょうおう】と呼ばれています)西光寺を建立し安置し、弟子の快護を住持させたのが始まりと伝わります。
正保2年(1645年)中興の法印尊覚は旧嵯峨御所大覚寺宮から大智院の称号を受け、末寺八十を数えるに至りましたが、明治に入り火災で焼失し佐世保に移転しました。
現在この爪刻不動明王は佐世保市の黒髪山大智院(第百四番札所)にお祀りされています。

その後西光密寺が再建され現在のご本尊は、 黒髪三所権現の本地仏といわれる、薬師如来、 阿弥陀如来、千手観音の三体の掛け仏(秘仏)となっています。

さてこちらの札所にご参拝の際にご注意いただきたいのは、山上の西光密寺さんは毎月1日、14日以外は無住なので兼務されておられる山麓の定林寺(佐賀県武雄市山内町宮野1024)が納経所となっていることです。

定林寺に参拝、西光密寺の納経朱印をお願いした後、約4キロの舗装された山道を登ると広めの駐車場にたどり着きます。

そこより少し徒歩で登り、石段を上がると入母屋造の西光密寺本堂です。

境内は、寺屋敷跡として山内町の史跡に指定され、南無阿弥陀仏碑や石仏が点在し、往時の信仰の深さが偲ばれます。

南無大師遍照金剛

納経所となっている定林寺は西光密寺と同じ「真言宗大覚寺派」の寺院で、ご本尊は阿弥陀如来です。
境内には山上の西光密寺を拝む遥拝所もあります。
また黒髪神社のご祭神の伊奘冉尊(いざなみのみこと)・速玉男命(はやたまのをのみこと)・事解男命(ことさかのをのみこと)の本地仏として西光密寺に祀られていた薬師如来、阿弥陀如来、千手観音の3面の懸仏(かけぼとけ)もこちらに収められています
その懸仏とは、鏡面に神像や仏像を取りつけたり、あるいは線刻などで表現し信仰の対象としたものです。
神仏習合の信仰により生まれたとされ、鎌倉・室町時代にかけて盛んにつくられたそうです。

九州八十八ヶ所百八霊場第七十番番札所 龍門山 宝光院

次回は九州八十八ヶ所百八霊場第七十番番札所「龍門山 宝光院」をお伝えいます。

願ねがわくは
この功徳くどくをもってあまねく一切いっさいに及およぼし
われらと衆生しゅうじょうと
みなともに仏道ぶつどうを成じょうぜんことを 合掌

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