啓蟄|けいちつ|蟄虫啓戸|すごもりのむしとをひらく|2024年

歳時記
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啓蟄 けいちつ 蟄虫啓戸 すごもりのむしとをひら

本格的な春ももうすぐそこです。5日より二十四節気は「啓蟄(けいちつ)」、七十二候は「蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)」となります。
冬ごもりしていた地中の虫たちもそろそろ春の訪れを感じ始めて活動を始める頃です。
啓蟄はその言葉の意味や響きから春の季語ともなっていて、言霊を大事にする日本人の感性が感じられます。

そして「啓蟄」の頃の風物詩として「東大寺二月堂のお水取り」があります。
東大寺二月堂のお水取りに関する記事は、風物詩のカテゴリーに分離・加筆の上、アップしてありますので、よろしければご一読ください。

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啓蟄

二十四節気の三番目「啓蟄」は皆さんにとっても耳慣れた節気の一つではないでしょうか。
啓蟄の「啓」には開くとか開放するという意味があり、「蟄」には虫などが土の中に隠れて閉じこもるという意味があります。
蟄居(ちっきょ)という言葉を時代劇好きの方は聞いたことがあると思いますが、昨今の新型コロナウィルス禍の「不要不急の外出自粛」を想起してしまう家の中に閉じこもり外出しないことで、中世から近世(特に江戸時代)武士または公家に対して科せられた刑罰のひとつで、閉門の上、自宅の一室に謹慎させるものを言います。
幕府や領主などから命じられて行う場合と、命じられる前などに自発的に自宅で謹慎する場合もありました。江戸時代には蟄居・蟄居隠居・永蟄居(解除なし)などに分けられていました。また、減封などが付加される場合もあったそうです。

啓蟄 けいちつ 蟄虫啓戸 すごもりのむしとをひらく

さて話が横道に逸れてしまいましたが、ここでいう虫というと昆虫を思い浮かべてしまいがちですが、昔は蛇(へび)、蜥蜴(とかげ)、蛙(かえる)も含めて「虫」と呼ばれていました。言われてみれば充てられている漢字すべてが虫偏の漢字です。
さらにお伝えすれば「蟄」という漢字は「蝮(まむし)」を表す象形文字だったそうです。

啓蟄と驚蟄

もともと啓蟄は中国では「驚蟄」という漢字が充てられていましたが、当時の漢王朝の皇帝の名前が「啓」だったため漢代ではこの字を使うことが憚られ、その代わりに意味が近く、春雷に驚かされ目を覚ますという意味合いも込めて「驚」の字が使われていました。
その後「啓」の字に一旦は戻されましたが現在では中国では再び「驚」の字が充てられています。
その「啓」の字が使われている間に日本に伝わったので日本では「啓蟄」となったというわけです。

初雷

春雷 初雷 虫出しの雷

雷が発生するメカニズムは、雷雲を形成する上昇気流の成因によって熱雷(ねつらい)・界雷(かいらい)・渦雷(からい)の3つに分類されています。
積乱雲でも寒冷前線や温暖前線上などで上昇気流が発生した場合の雷を界雷と呼んでいます。
帯状にまとまって発生し、セル(空気の塊)の世代交代があって前線の移動に付随して落雷域が移動することが多いようです。

立春から立夏の頃までに発生する雷は「春雷」とも呼ばれ、春の季語ともなっています。
その雷は、寒冷前線通過時にその前線に沿う上昇気流により発生する界雷(かいらい)です。時には雹(ひょう)を伴う事もあります。
雹(ひょう)というのは、直径5mm以上の氷の粒のことをいいます。

積乱雲の中には、小さな水と氷が存在しています。
その氷が周りの水をくっつけながら成長し「あられ」となります。
通常は、あられはある程度大きくなるとその重みで地上に向かって落ちるのですが、積乱雲の中には強い上昇気流があるため、なかなか地上に落ちません。
このようしてあられが空中に長くとどまることで、さらに大きく成長し、そして直径5mm以上になると「ひょう」と名前を変えます

とりわけ立春の頃の雷は春の到来を伝えるともいわれ、その中でも立春を過ぎて初めて鳴る雷のことを「初雷(はつかみなり・はつらい)」と呼び、啓蟄の頃によく鳴ります
そのため春を告げるとともに地中の虫たちはその雷鳴に驚かされ地中から這い出ると考えられていたため「虫出しの雷」とも呼ばれています。

ひょうは大きいものだとみかんやソフトボールのような大きさになることもあり、人に直接当たれば大変なことになります。
そこまで大きくならなくても、農作物の葉などに穴をあけたり、ビニールハウスを突き破ったりするため、農家にとっては深刻な被害をもたらしてしまいます。

「春雷」と響きは風情がありますが、その実、なかなか侮れません。

蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)

啓蟄 けいちつ 蟄虫啓戸 すごもりのむしとをひらく

七十二候の第七候の「蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)」も地中で冬ごもりしていた虫たちが春の気配を感じ穴を開いて這い出してくるころという意味で二十四節気の「啓蟄」と同じ意味です。二十四節気と七十二候が同じ意味というのも珍しいかもしれませんがそれだけ象徴的なシーズンなのでしょう。
この候は、秋の第47候の「蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)」と対をなす候です。
蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)の記事をご参照ください。

啓蟄あたりが旬の食べ物

この時期、虫とともに地中から顔を出し来るのが山菜です。
昔の人は「春の食卓には『苦味』を盛れ」と伝えてきています。これは春には苦いものを食べるのがカラダに良いとする、古くからの言い伝えです。
ちなみに、「夏は酸味=疲労回復、秋は甘味(または辛み)=エネルギー、冬は厚味(または油分)=こってり味・体を温める」と言われています。
では、なぜ春には苦いものが良いのでしょうか。
人間をはじめとする動物は、気候が暖かくなる春先には新陳代謝が活発になり、体内に溜め込んだ脂肪や老廃物を排出して春のカラダへと変化していきます。
その助けになるのが「苦味」のある食材だと言われています。
山菜の苦味成分は、抗酸化作用で知られるポリフェノール類や新陳代謝の活性化を促すアルカロイド類です
昔の人々は苦味を持つ山菜や春野菜が体に良いということを動物が食す姿や実際に食し、知恵を身につけていったのではないでしょうか。私たち人間も春のカラダに必要な春の食材・山菜を、食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。

山菜

以前「款冬華(ふきのはなさく)」の候でも書きました「蕗の薹(ふきのとう)」も旬を迎え、さらに蕨(わらび)薇(ぜんまい)筍(たけのこ)などの山菜類もこの時期が旬です。

春野菜

またこの時期に辺り一面を黄色に染める「菜の花」はまさしく旬の花と同時に早春の季節感を楽しめる食材でもあります。
菜の花の「菜」という字は「食べられる植物」という意味があります。
旬は1~3月とされ、花蕾とやわらかい葉と茎が食べられます。
春先に花茎と蕾を食用にする種類が「菜の花」または「花菜」の名前で流通しています。お浸し和え物煮浸しなどの和風料理の他、中華料理風の炒め物、洋風のパスタソースなどにも使われます。

新玉ねぎ

さらにこの時期の旬の食材として忘れてならないのが春野菜の「春キャベツ」や「新玉ねぎ」もあります。春キャベツについては「雨水の記事でも書きましたので省きますが、「新玉ねぎ」については、皮が薄くみずみずしく柔らかく辛みも少ないこの時期の玉ねぎはサラダ等の生食にはうってつけです。メニューに新玉ねぎサラダも加えましょう。

これら旬の食材での「炊き込みご飯」はいかがでしょうか。
こうして書いていくと自ずと今夜のメニューは決まりそうです。
啓蟄尽くしのメニューののラインナップは「山菜炊き込みご飯」「菜の花のおひたし」「さわらの西京味噌焼き」「はまぐりのお吸い物」「春キャベツと新玉ねぎのミックスサラダ」で決まりのようです。

結詞

これから春のお花見や行楽などは例年に近い春になりそうです。
しかし、今年は多くの地域でスギ花粉の飛散が例年になく多いとの予想が出ているようです。

そして物価の高騰など、今年も春霞のように視界不良の春ではありますが、皆さんにとっては「啓蟄」とともに今年こそ良い春が来ますように!

桃始笑 ももはじめてさく

暦はどんどん春らしい言葉が並んでいきます。
10日より七十二候は啓蟄の次候「桃始笑(ももはじめてさく)」と着実に本格的な春に向かっていきます。

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