大暑|桐始結花 |たいしょ|きりはじめてはなをむすぶ|2023年

歳時記
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大暑 たいしょ

今年の夏も猛暑による熱中症と物価高、そしてコロナウィルスや他の感染症の不気味な感染拡大のトリプルパンチ中、23日より二十四節気は本格的に暑くなる「大暑(たいしょ)」となり、七十二候もその初候「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)」と移ります。そして30日は「鰻」で有名な夏の土用の丑の日となります。

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大暑(たいしょ)

2022年は23日より8月6日まで二十四節気は大暑となります。
大暑は暦便覧には「暑気至りつまりたる時節なればなり」と記されているように暑さがピークとなり、暑中見舞いなどのご挨拶状をお送りするのには最適な時期です。

暑中見舞い

ちなみにお隣中国では陰陽五行説より「三伏」の間が一番暑い時期とされています。
三伏(さんぷく)とは、陰陽五行説に基づく選日(さまざまな暦注の中に含まれなかったものの総称)の1つで、初伏(しょふく)・中伏(ちゅうふく)・末伏(まっぷく)の総称です。
陰陽五行説における相剋の関係性から「火性の最も盛んな夏は凶日になる」であり、陰陽五行説的には「季節と日の相性の悪い日」という意味があります。

また「夏の勢いが大変盛んで秋の気を伏する日」という意味もあるので「伏」の時が使われています。
三伏の日取りは流派により異なりますが、最も一般的なものでは夏至以後の3回目の「庚(かのえ)の日」・同じく4回目と立秋以後の最初の「庚(かのえ)の日」をそれぞれ初伏・中伏・末伏としています。

ちなみに他の流派では、夏至以後の3回目・4回目・5回目とするものや、小暑以後の1回目・2回目・3回目とするものもあります。
ただ、いずれの方法でも共通しているのは、起算する日(夏至や小暑)が庚(かのえ)である場合はその日を1回目としています。
一般的な流派によれば、2023年は7月11日(火)~8月10日(木)に当たります。概ね7月中旬から8月上旬と覚えておいてもいいかもしれません。
また、陰陽五行説における相剋の火剋金が発生するのは「庚の日」と決まっていますので、夏の「庚の日」が対象となっていると覚えても正解と言えます。

そこで暑中見舞いにも「三伏の候」「三伏猛暑のみぎり」などの言葉が時候の挨拶の冒頭に使われることもあります。
日中の暑さもさることながら、夜も涼しくならず寝苦しい夜が続きますので、ウクライナ情勢から節電の呼びかけがされていますが、適切に冷房を使用し、枕元には飲み水を用意したりして、くれぐれも熱中症にはご用心ください。

打ち水

打ち水

猛暑の中、暑さを和らげる江戸時代からの知恵のひとつとして「打ち水」があります。
現代でも町内総出で打ち水イベントを行っているところもありますが、この「大暑」の日に行われる所も多いようです。
そこで「打ち水」のコツをお伝えしておきます。

打ち水の時間帯と回数は?

効果的な打ち水はまだ気温が上がりきらず、日差しが強くなっていない朝方と少し気温が下がり始め、日が傾き始めた夕方二回がお勧めです。
朝の打ち水は日中の冷房使用頻度を下げ、夕方の打ち水は建物の蓄熱温度を下げる効果があると言われています。
ご自宅で植物を育てている方は、その水遣りと同じで、植木鉢に水を与えた時に打ち水もしておくと覚えておくと効果的な打ち水が出来ると思います。

打ち水の水は?

夏の間は水不足が心配になる地方もあることから、出来るならばお風呂の残り湯などの再利用水がお勧めです。

桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)

桐の花 桐始結花 きりはじめてはなをむすぶ

さて七十二候は「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)」と移ります。
この解釈にも諸説ありますが、当ブログでは多くの方が解釈している説に従って話を進めさせていただきます。

さて、桐と言われると「箪笥」くらいしか思い浮かばないのは私だけでしょうか。
昔は、女の子が生まれると桐の木を植えて、その子の嫁入り道具の1つとして、嫁ぐ時にその桐の木で箪笥を作るという風習もあったそうです。

この七十二候の「桐始結花(きりはじめてはまをむすぶ)」は桐の花が実を結び始める頃という意味で、桐は5月、6月頃に薄紫色の花を咲かせ、この時期に卵形の実をつけます。やがてその実は冬になると二つに割れて中から種を飛散させます。
と同時に、翌年咲く花の蕾もつけ、一年風雨・雪などにじっと耐えて咲かせる珍しい植物です。

ちなみにこの桐は身近なところでしかも無意識のうち目に触れています。その一つが、500円玉の表面に刻されているのが桐です。

500円硬貨 500円玉

明治以来「日本政府の紋章」として使われています。
ちなみに日本の国章はご存じ「菊の紋」です。

そのためニュースなどで総理大臣などが会見などに臨む演台にはこの桐の紋が印されています
桐の原産国である中国より「鳳凰が住む神聖な木」として伝わり、それに倣って日本でも皇室や時の権力者の紋章として用いられてきました。
また農耕生活においては豊穣をもたらすとされています。

土用(どよう)

土用

今年はすでに20日より土用に入り立秋の前日の8月7日までが夏土用の期間です。
そして2022年は7月30日が「土用の丑の日」ですが、今年はもう一回8月4日にもあります。

ところで皆さんは土用=夏というイメージを持っておられるのではないでしょうか。

実はこの「土用」春夏秋冬の年4回訪れる雑節なのです。
中国の陰陽五行説では万物の根源として「木火土金水」が挙げられ、それぞれ春=木、夏=火、秋=金、冬=水の四季が充てられています。そこで余ったと言っては申し訳ないのですが残った「土」は立春・立夏・立秋・立冬前の約18日間を季節の変わり目の「土用」として充てました。

昔は土を司る神様が支配する土の気が強くなり、土を動かしてはいけないとされてきました。
今でも、家などを建築する際の土を掘り起こしたりする基礎工事の開始や井戸掘りやその清掃作業などは土用の期間を避けることが多いようです。
しかしながら18日間も作業を中断していては支障が生じるために「土用の間日」という土の神様が天上に帰られる日が設けられていて、その日は作業をしてもかまわないようです。ちなみに2023年夏の土用の間日は、7月19日、26日、27日、31日です。

これも暑さと同時に季節の変わり目で過度な労働を戒め、体調を整えましょうという知恵から出たものかもしれません。

土用の丑の日の食べ物

土用=夏、そして土用の丑の日と言えば「鰻」というイメージが強いのですが、なぜ夏土用の丑の日に鰻を食べるのかというと、夏の暑いさなかに脂がのり「冬が旬」である鰻の売り上げが落ちてしまうと嘆いていたうなぎ屋が知人だった、あのエレキテルで有名な平賀源内に相談したところ源内は「本日丑の日 土用の丑の日うなぎの日 食すれば夏負けすることなし」という看板を店頭に掲げたらどうだとアドバイスしたところ飛ぶように鰻が売れたという逸話が有名です。

しかしながらもともと鰻を食べることでは奈良時代の万葉集にも「石麻呂に吾れもの申す 夏痩せによしといふものぞ むなぎ(うなぎの古形)とりめせ」という大伴家持の歌が詠まれています。意味は「石麻呂に私は申し上げたい。夏痩せによいというものですよ。鰻をとって召し上がりなさい」です。

余談ですが、大伴家持は「令和」で一躍有名になった大伴旅人の息子さんです。
このように平賀源内より以前から夏と言えば鰻というのは浸透していたようです。

鰻の減少から昨今では高いものとなってしまい、おいそれと土用の丑の日だから鰻というわけにはいかなくなってしまっています。

鰻 うなぎ ウナギ

最近では鰻の蒲焼に似せたものも出ているようですが、どうしても「鰻」じゃなければダメ!という方を除いて、夏土用の丑の日に食べるものとして、うどん・ウリ・梅干し・ウサギ・馬肉(ウマ)・牛肉(ウシ)など「う」のつくものなら何でもよいそうです。いずれも食欲が減退していても食べやすいものやスタミナ源になるような食べ物です。

土用しじみ

さらには「土用しじみ」という言葉もありますが、シジミも良いようです。

結詞

先ほど万葉集の鰻に因んだ歌をご紹介しましたが、大伴家持は同じく吉田石麻呂翁に続けてもう一首贈っています。

痩す痩すも 生けらばあらむを はたやはた 鰻を漁ると 河(川)に流れな

「痩せながらでも生きている方が良いでしょう、万が一鰻を獲ろうとして河に流れてはいけませんよ」という意味なのですが、なかなかエスプリの効いた歌です。
私などはビール太りで夏痩せならぬ「夏太り」。
今年も酷暑が予想されています。
新型コロナウィルスや他の感染症など、じわじわ拡大する中、ワクチン接種やマスクの臨機応変な着脱など自覚を持った行動を心がけたいと思っています。
土用には栄養価は高く、お値段は安いものを食べて、コロナや猛暑さらに物価高にも負けず、暑さを乗り切りたいものです。

土潤溽暑 つちうるおうてむしあつし

次回は大暑の次候「土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)」をお伝えしていきます。

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