蓮始開|はすはじめてひらく|蓮と睡蓮|蓮と仏教|古代蓮|2023年

歳時記
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七十二候は12日よりは「蓮始開(はすはじめてひらく)」となります。
泥の中から茎を伸ばし、泥を抜けて咲いたと思えないほど穢れなく鮮やかで爽やかな色の花をつけます。
さらにはその泥が汚れていればいるほど美しく大きな花を咲かせるというのには驚きです。

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蓮始開(はすはじめてひらく)

蓮始開 はすはじめてひらく

さて、この蓮始開(はすはじめてひらく)は文字通り蓮の花が咲き始める頃を表しています。
蓮はハス科の多年性水生植物でインド原産です。
その地下茎は「蓮根(レンコン・はすね)」で見通しがきくに準(なぞら)えて縁起の良い野菜です。
蓮という名前の由来はその花托が蜂の巣のように見えることから古くは「はちす」と呼ばれ、それが転訛して「はす」になったと言われています。

蓮 花托

花の時期は7月から8月で早朝に咲き始め、昼過ぎには閉じてしまいます。
それを繰り返すこと4日間、最後は花弁を一枚ずつはらはらと落として花の寿命を終えます。

蓮と睡蓮の見分け方

蓮とよく見間違うのが、モネの絵画でも有名な「睡蓮(すいれん)」です。
そこで恒例となった蓮と睡蓮の違いのお話をしておきます。
睡蓮はスイレン科の多年性水生植物です。
その名前はお昼ごろ咲き始め夕方前には閉じてしまうので「眠る蓮」からついたと言われていますが、蓮も早朝から咲き、お昼過ぎには閉じてしまうのですが、蓮は人々が起き出す前から咲き始め、睡蓮は人々が起きた後から咲き出すという若干の咲き始めの時間差があるため、睡蓮の方が夜間眠っているように感じられたのではないでしょうか。

見た目の違いとしては、以下のような違いがあり、特に葉の特徴さえ覚えておけば、見分け方は意外と簡単かもしれません。

蓮 はす ハス

・切れ目がない
・光沢がない
・撥水性がある
・色は緑色

・水面より上で咲く

睡蓮

睡蓮 すいれん スイレン

・切れ目がある
・光沢がある
・水を弾かないが浮き葉となる
・色は緑色、赤い斑点の緑色、赤色がある

種類にもよりますが、一般的に水面に咲く

蓮と仏教

蓮と仏教 蓮華

蓮はインド原産と言いましたが、仏教の伝来とともに中国を経て日本に伝わりました
泥(でい)より出でて泥に染まらず」と言われその崇高さが仏様の智慧や慈悲に通じ、泥に象徴される俗世に生れても大輪の蓮華(悟り)を咲かせる蓮の花を重ね、その象徴となってきました。

蓮華(れんげ)」という言葉がありますが、これもまた仏教の伝来とともに中国から日本に入ってきた言葉で、仏教においては「尊い仏の悟り」という意味があります。
また、一般には仏教の祖である仏陀(お釈迦さま)の故郷・インドを原産国とする「蓮(はす)」や、「睡蓮(すいれん)」の総称としても知られています。
別の植物である蓮と睡蓮が「蓮華」で一括りにされていることには、長い歴史の中でさまざまな宗教文化を取り込んできたインドの歴史とも関係が深いようです。

仏教経典の「摩訶般若波羅蜜経」には、「白蓮華(びょくれんげ)・紅蓮華(ぐれんげ)・青蓮華(しょうれんげ)・黄蓮華(おうれんげ)」の4種類が記述されています。その中でも特に仏教で重要視されているのが、煩悩に穢されることのない清浄な仏の心をあらわす「白蓮華」と、仏の大悲(だいひ)から生じる救済の働きを意味する「紅蓮華」で、いずれもお釈迦様の故郷に咲いていた「蓮」です。

一方、「青蓮華」と「黄蓮華」は睡蓮のことで、睡蓮にはさらに「温帯種」と「熱帯種」の2種類があります。青や紫といった鮮やかな色合は熱帯種の特長で、古来よりインドで崇拝されていた神々の象徴がのちに仏教に取り込まれました。

また、観音様が手に持っている一輪の花は「未開敷蓮華(みかいふれんげ)」と呼ばれます。
今にも咲きそうな蓮の蕾(つぼみ)を表現したもので、悟りを約束されながらも菩薩として働く観音様の姿をあらわしています

修業を経て悟りを得た状態を表現したのが、開花した蓮華を意味する「開敷蓮華(かいふれんげ)」です。

蓮華の五徳

仏教のシンボルの蓮(蓮華)には、五つの徳が備わっています。

淤泥不染の徳(おでいふぜんのとく)

蓮は泥の中で育つけれども、その泥に染まることなく、綺麗な花を咲かせます。
私達もどのような厳しい環境にいたとしても、心の中は清浄に保てるということを表しています。
私達は生きていくために、多くの過ち(嘘をつく・他人に迷惑をかける)を犯していますが、これを当たり前のことと思っていると、ずっと泥の世界に埋まったままです。
しかし、そのことを自覚することができるようになると、迷惑をかけずに生きることができないのが人間であると気付き、全てのものに対してありがとうという気持ち、感謝の心が生まれます。

一茎一花の徳(いっけいいっかのとく)

蓮の花は一つの茎に一つの花を咲かせます。唯一無二の存在です。誰の代わりでもありません。世界に一つだけの花です。自分自身をしっかりと持って、人生を歩みましょう。

花果同時の徳(かかどうじのとく)

蓮の花は徐々に花開いていく植物に対して、つぼみからあっという間に花開く特徴があります。
そして花が開くと同時にタネ(果)もできているという意味です。
つまり、生まれた時から、すでに誰にでも仏の心が備わっているということを表しています。
ですから仏の原石は備わっているわけですから、しっかりと修養し、きちんと磨いていきましょう。

一花多果の徳(いっかたかのとく)

一つの花には沢山の種ができます。
自分の悟り(開花)が沢山の人を幸せにできます。
お釈迦様もご自身が悟りを開かれた後、生涯、その悟りを人々に伝え歩きました。ですから仏教として今に伝えられています。

中虚外直の徳(ちゅうこげちょくのとく)

蓮の茎には栄養を運ぶために、管のような穴が開いています。
一見すると弱くて直ぐに折れてしまいそうですが、空洞があることによって強度が増しています。
私達人間も小さな穴が開いていて弱そうに見えますが、実際は穴が開いているからこそまっすぐに伸びる強さも持っています。
欲に支配されず、真っ直ぐに生きましょう。

一蓮托生

さて、もうひとつ仏教と蓮にまつわる言葉をお話しします。

一蓮托生」という言葉をお聞きになったことがあると思いますが、この言葉は、仏教の死後の世界観に由来する言葉です。

仏教では死後、同じ蓮花の上に生まれ変わって身を寄せ合う(託す)という思想があります。
生前に功徳を積んだ者は死後に極楽浄土へ行き、一緒に神聖な「蓮の台座(はすのうてな)」の上に生まれ変わるという考え方を、「一蓮托生」といい、現在では多少意味合いが違ってきてはいますが、よく聞かれる「一蓮托生」の由来となっています。
現代では「一蓮托生」は、その意味が転じて「事の善悪にかかわらず仲間として行動や運命をともにする」という「共犯・共謀」という意味に近い意味で使われるようになってしまっているのが残念でなりません。

本来の意味は、もっと慈しみ深く、優しい意味が込められています。

古代蓮

古代蓮 古代ハス

蓮の実の皮はとても厚く、土の中でも発芽する能力を長い間保ち続けることができます
そこで最近ニュースなどで取り上げられる古のロマンを感じさせてくれる「古代蓮」ですが、千葉県の落合遺跡から「大賀ハス」や中尊寺の須弥壇から見つかった「中尊寺ハス」、さらには埼玉県の行田市で出土した「行田ハス」などが有名で、いずれも800年から3000年の時を経て発芽したものです。
そんな昔の人が愛でていた「蓮」が現代に蘇ったニュースを聞くと、遥か縄文から弥生時代、そして奈良から平安時代へと時空旅行に出たような気がします。

九州管内でも「古代蓮」が観られるところがありますので、いくつかご紹介しておきます。

鹿央古代の森公園・ハス園

熊本県山鹿市鹿央町岩原2965

「鹿央古代の森」内にあるハス園。推定2000年前の古代ハス「大賀ハス」など、20数種類が6月下旬から8月中旬にかけて花を咲かせ、その美しさを競います。

横田古代蓮園

福岡県北九州市小倉北区霧ケ丘2丁目1

個人の方が趣味で収集した120種類の古代ハスを無料で一般公開されてます。

聖光寺・二千年ハス池

佐賀県多久市多久町東ノ原1848


竜造寺長信が梶峰城入城に際し鬼門の位置に建てた神仏混合の寺院で、世界最古の花といわれる二千年ハスの池などがあります。

千栗土居公園

佐賀県三養基郡みやき町大字白壁1074-22


3000坪の敷地内に約9700平米の蓮池があり、その南側約200平米の池で、「二千年ハス」と「舞妃蓮」が毎年6月下旬から8月初旬にかけて開花します。

結詞

半夏雨 豪雨

古より「半夏生」に降る雨を「半夏雨」といって災害をもたらす大雨となると言われてきましたが、昨今の全国各地を襲う豪雨はある意味「想定を超えた」異常気象ではないでしょうか。
かと思えば今年は異例の梅雨明けの早さ、短さとなりました。
みんなが地球温暖化などによる気候変動について真剣に考えを巡らせる時期に来ていると思います。
この瑠璃色の宇宙船地球号を守るためにも・・・

さて、前回の記事にも書きましたが、沖縄本島中部にある東南植物楽園では「蓮祭り」が開催されています。(2023年は6月17日より開催
私も以前撮影に早い時間帯に出かけたことがあります。蓮は朝早くから咲き始め午後になると萎んでしまうので蓮観賞は午前中がお勧めです。東南植物楽園では土・日・祝は朝7:00よりオープンしているそうです。

鷹乃学習 たかすなわちがくしゅうす たかすなわちわざをならう

想定外、異例ずくめの天気が続きますが、暦は淡々と時を刻んでいきます。
次回は小暑の末候「鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)」と移っていきます。

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