楓蔦黄|もみじつたきばむ|2023年|紅葉情報|文化の日

歳時記
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楓蔦黄 もみじつたきばむ

九州・沖縄でも朝夕の冷え込みに秋が深まりつつある感じがしてきました。
11月3日より七十二候も霜降の末候「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」になります。楓(かえで)や蔦の葉が赤や黄色に色づく頃です。
秋の山が紅葉によって色づく様子は、「山粧う(やまよそおう)」とも表現されていて、春の「山笑う」、夏の「山滴る」、冬の「山眠る」とともに俳句の季語となっています。北から南へ、山から里へと秋の深まりとともに唱歌「紅葉」の歌詞にあるような美しい景色が楽しめます。
また、3日は「文化の日」です。

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楓蔦黄(もみじつたきばむ)

楓蔦黄 もみじつたきばむ

冒頭に書きました唱歌「紅葉」の歌詞は、次のようなものです。

高野辰之作詞
岡野貞一作曲

秋の夕日に照る山紅葉(やまもみじ)
濃(こ)いも薄いも数ある中に、
松をいろどる楓(かえで)や蔦(つた)は
山のふもとの裾模様(すそもよう)。

渓(たに)の流(ながれ)に散り浮く紅葉、
波にゆられて離れて寄って、
赤や黄色の色様々に、
水の上にも織る錦。

歌詞にもあるように紅葉(こうよう)の二大スターは「」と「」です。

その「楓」ですが、植物の分類学の上では、モミジと呼ばれる種もカエデと呼ばれる種も、同じカエデ科カエデ属の植物という意味では一緒であり、何か厳格な区別があるわけではないようです。ただ盆栽の世界では葉の切れ込みが深い種をモミジ葉の切れ込みが浅い種をカエデと区別しているようです。ちなみにモミジとカエデを区別しているのは日本だけです。

また「モミジ」は特定の植物の名称ではなく、草木の葉の色が揉み出されてくるという木々の現象を指す動詞「揉み出(もみず)」が名詞に変化したものが語源となり、「カエデ」は「かえるて」、葉の形が蛙(かえる)の手に似ていることに由来していると言われています。

葉が赤色に染まるのが「紅葉」、黄色に変わるのが「黄葉」で、どちらも「こうよう」と読みますが、楓のように一つの木でも赤・オレンジ・黄など三色のグラデーションが現れる木もあれば、銀杏・ポプラ・プラタナス等のように専ら「黄葉」する木もあります。

「紅葉(こうよう)」とは、秋、落葉する前に緑色の木の葉が赤や黄に色づく現象のことを言います。
最低気温が5℃くらいになるとぐっと進みます。
木々達はまわりからの栄養補給がしにくくなる季節を前に、葉っぱを落として養分をとられないようにしておくという冬支度を始めます。
葉に蓄えらえた栄養は幹へ回収され、その後、葉柄の付け根にコルク質の離層という組織が防火扉のように出来て、枝との物質の行き来を遮断して、無駄な水分やエネルギーが冬の間に消費されるのを防ぎます

黄葉 イチョウ 銀杏

葉の色が変化するメカニズムは、葉の中にある色素の作用によるものです。
秋に気温が下がるとともに、日照時間も短くなり葉も老化します。すると葉を緑色に見せていた光合成に関わるクロロフィルという葉緑素も分解されて能力が低下していきます。一方、光合成に関わるもう一つの要素、カロテロイドの黄色の要素は残るため、葉は黄色に変色して見えるというわけです。

落葉樹の大半はその離層によって葉を枝から落とすために葉で生産されたタンパク質が、葉のみに留ることによってアントシアニンが作られ、この成分により赤色に発色し真っ赤に染まっていきます。
他方、アントシアニンが生成されない銀杏・ポプラ・プラタナス等は黄色一色に染まるということです。
そして冬支度の仕上げは、離層のところで葉が切り離されて散り落ちてゆきます。

蔦 紅葉

さて、もう一つのスターの蔦がフェンスや家の外壁を鮮やかに彩る様も、非常に魅力的ですが、全ての蔦が赤く色づくわけではありません。蔦には夏蔦と冬蔦の二種類があって、秋になると美しく紅葉するのは「夏蔦」です。一方「冬蔦」は、冬になっても落葉せず、ほんの少し紅く色づくものもありますが、基本的には常に緑色のものです。

いずれにしても落葉する前の木々たちが緑の葉を赤や黄色系の様々な色に変化する様は無常観とその束の間の美しさゆえに、移ろいゆく季節を愛でる私達日本人にとって春の桜とともに琴線に響く風景なのでしょう。

押し葉の楽しみ

落ち葉を拾うことで1枚の葉から先程書きました自然のメカニズムを身近に感じることができます。
しゃがんで葉っぱをいじっていると、葉に触れた指先からこどもの頃の落ち葉焚きなどの記憶が蘇ってきます。

押し葉

色褪せていないきれいな落ち葉を見つけた時は、思わず持ち帰りたくなります。
そんな時には、モミジなどは、かばんやポケットなどに無造作に放り込まずに とりあえず手帳や本などのページにサッと挟んで置くと良いでしょう。
さらにティッシュペーパーなどに挟むと、汚れ防止にもなり、湿り気も吸い取ってくれます。

近所の公園などに落ち葉拾いを目的に、たくさん拾い集める時には、あらかじめ湿り気を保つために湿らせたキッチンペーパーなどを入れたビニール袋にポンポン入れてましょう。水分を保ったまま持ち帰ることが重要です。

落ち葉は、乾燥してしまうと丸まったり割れたりしてしまうので、乾ききらないうちには次の方法で「押し葉」にすることが大切です。

持ち帰った落ち葉はすぐに水で汚れを落とし、新聞紙に重ならないように並べて挟んでから、重石をして置いておきますと、1週間くらいで乾くので完成です。
そのため、なかには最初から新聞紙を4分の1サイズくらいに折ったものをたくさん用意して出かけるという方もいらっしゃるようです。拾ったそばから、新聞紙の間に重ならないように、落ち葉を挟み込んでおき、持ち帰ったら、そのまま重しをかけて押し葉にしてしまうという算段です。

いずれの方法にしても、できるだけ「落ちたばかり」の新鮮そうな落ち葉を探すことが、きれいな押し葉が作る重要なポイントです。

うまく出来た押し葉は、テーブルセッティングに添えたり、栞代わりに本に挟んだり、麻紐などにピンチで留めてお部屋に吊るしてみたりと、家に居ながら気軽に秋を満喫することができます。また、お手紙などにさりげなく貼っておくのも風情を感じられます。

燻ぶり続ける新型コロナウィルス禍の中、わざわざ遠くまで紅葉狩りに出かけなくとも、身近にある紅葉で、今年の秋を心ゆくまで落ち葉に触れながら、おうち時間を楽しんでみるのも一興かと思われます。

2023年紅葉予想

さて九州でも山などはそろそろ色づき始めているところも出始めてきてはいますが、現在は少し早いかもしれません。

ご参考までに10月3日に発表された日本気象協会の「紅葉の見頃情報」では以下のようになっています。

日本気象協会

この予想ですと九州では今年も10月中旬以降、徐々に見ごろを迎えるスポットが多くなりそうです。
今年は新型コロナウィルスやインフルエンザなどの感染防止に基本的に留意しながらお出かけください。

私が出かけたことのある紅葉スポット20選

楓蔦黄 もみじつたきばむ 大興善寺

福岡県

1. 英彦山
2. 宝満宮 竈門神社
3. 秋月城址
4. 呑山観音寺
5. 柳坂曽根の櫨並木
6. 雷山千如寺大悲王院
7. 福岡県四王寺県民の森
8. 永勝寺
9. 清水寺本坊庭園
10. 楽水園

大分県

1. 深耶馬渓・耶馬渓・奥耶馬渓
2. 岡城址
3. 九酔渓
4. 文殊仙寺
5. 両子寺

佐賀県

1. 大興善寺
2. 陶山神社
3. 祐徳稲荷神社

熊本県

1. 菊池渓谷

宮崎県

1. 高千穂峡

*現地詳細は各リンク先をご参照ください。

文化の日

文化の日

さて11月3日は「文化の日」です。
文化の日は、国民の祝日に関する法律によれば「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ことを趣旨としているとあります。
その文化の日に行われている行事は文化功労者および各褒賞「紫綬褒章(しじゅほうしょう)」(科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた人に授与)の伝達式です。文化を称える行事として、皇居において文化勲章(文化の発達に関し特に顕著な功績のある人に授与)の授与式が行われます。

ちなみに2023年度の文化勲章は歌舞伎の川淵三郎氏(86)など7人、文化功労者は俳優の北大路欣也氏(80)、現代美術家の横尾忠則氏(87)や漫画家の里中満智子氏(75)をはじめ20人が選ばれました。

11月3日は1946年(昭和21年)に日本国憲法が公布された日であり、日本国憲法が平和と文化を重視していることから、1948年(昭和23年)に公布・施行された祝日法で「文化の日」と定められました。その日本国憲法は、公布から半年後の1947年(昭和22年)5月3日に施行されたため、5月3日も憲法記念日として国民の祝日となっています。

もうひとつ11月3日は明治天皇の誕生日でもあります。
かつて11月3日は、天皇の誕生を祝う「天長節」、のちに「明治節」として、祝日となっていました。
その起源は中国の玄宗皇帝が老子の「天地長久」の語に基づいて創始したと言われています。
「天地長久」とは天地とともに天子の寿命の限りないことを希求するという意味で、日本では奈良時代末期の775年に光仁(こうにん)天皇が詔(みことのり)を発して、自らの誕生日を祝したという記録があります。
明治になり、古代の例に倣って復活させ、国家の祝日となりまた。
しかし敗戦とともに第二次世界大戦後は「天皇誕生日」と改称されました。
ちなみに大正天皇はは8月31日、昭和天皇は4月29日(現、昭和の日)、平成天皇は12月23日がお誕生日です。
そして令和の今上天皇は2月23日が天皇誕生日で、祝日です。

余談が多くなりましたが、このような内容を持つ11月3日が「文化の日」という祝日になるまでには、憲法発布は11月1日の予定でしたが、半年後の施行日(5月1日)がメーデーと重なるという理由で直前に施行日が5月3日に急遽変更されたことから、必然的にその半年前の11月3日になったそうです。
当時の参議院側は11月3日を「憲法記念日」とすることを強硬に主張したようですが、GHQ側が、11月3日だけは絶対にだめだと主張し、衆議院が5月3日を憲法記念日とすることに同意したため、参議院側が孤立する事態になりました。
しかし、その時、突然GHQ側から、憲法記念日という名でない記念日とするなら何という名がいいか、という話を持ち出してきたそうです。
そこで文化を愛された明治天皇を意識したかどうかは定かではありませんが「文化の日」として祝日となったようです。

結詞

日本の紅葉の美しさや鮮やかさは、世界有数と言われています。寒暖の差など変化に満ちた気候風土のおかげで、その色の豊富さやグラデーションの繊細さでは群を抜いています。
冬の到来を前にして、「錦秋」と呼ばれる各地の秋景を訪ねて、色鮮やかで美しい日本の秋を心ゆくまで満喫しましょう。

立冬 りっとう

暦も二十四節気は、いよいよ冬の始まりである「立冬

山茶始開 つばきはじめてひらく

そして七十二候はその初候「山茶始開(つばきはじめてひらく)」と移っていきます。

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