金盞香|きんせんかさく|2023年|水仙|ボジョレヌーヴォー

歳時記
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金盞香 きんせんかさく 水仙

徐々に冬らしさも感じ始めましたが、七十二候は、18日より立冬の末候「金盞香(きんせんかさく)」となります。
早咲きの水仙の花が、上品な芳香を放ちながら、咲き始める頃です。
さらには、16日は、昨今では秋の風物詩と言えるようになってきている「ボジョレヌーボー」の解禁日です。

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金盞香(きんせんかさく)

さて、この「金盞香」のきんせんかは「水仙を指す」という説や「正しく金盞花(キンセンカ)を指す」など諸説あり七十二候解釈の論争の一つとなっています。
一般的に言われているのはキク科のキンセンカではなく「水仙」を指すという解釈が多いようですが、水仙(ニホンスイセン)、金盞花(ホンキンセンカ)の両方をご紹介して参ります。

また金盞香は「きんせんかさく」と読んでいますが、「きんせんこう(香)ばし」と読まれている方もおられます。

太陽暦に替わった現代社会では現代流の季節感からか古人の解釈を的確に判別するのは難しいものです。

水仙(ニホンスイセン)

水仙は別名「雪中花」「金盞銀台(きんせんぎんだい)」とも言われ寒さの中に健気に咲くその姿は「春の訪れ」を予感させ、冬の枯れ山の中で咲く花として縁起物とされ、お正月の床の間の生け花に彩りを添えるものとして用いられることも多いようです。
水仙という漢名は、中国の古典にある「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」という言葉に由来していて、水辺で咲く姿と芳香があたかも仙人のように感じられるところから、そのように呼ばれるようになりました。

金盞香 きんせんかさく 水仙

水仙の花は、その特徴として中心にある筒状の部分があります。
副花冠(ふくかかん 花冠は花びらの集合体)と言って、これが金の盞(盃)に見え、外側の白い部分銀台に見立てることによって前述の「金盞銀台」という別名が生まれたものと思われます。

その銀台に見立てられた白い花びらのように見える部分は6枚あり外側3枚は萼(がく)で、内側3枚のみが花弁だそうです。二つをあわせて花被片(かひへん)と呼びます。

ところで仄かで上品な香りを放つ水仙ですが、実は有毒植物で誤って食べてしまうと食中毒症状を引き起こします。
強い吐き気を伴うため、その大部分が吐き出され死に至るような重篤症状には稀にしか至らないようですが、死亡例もあり危険なことには変わり在りませんので、くれぐれも「ニラ」と似ているからといって食べたりなさらないようにご注意ください。
また老婆心ながら、家庭菜園をされている方は用心のため、ニラやあさつきなどと並べて植えないようにしてください。

水仙とギリシャ神話

水仙の学名「Narcissus(ナルキッソス)」は、そのギリシャ神話からの命名です。
スイセンの花言葉は「うぬぼれ・自己愛」などネガティブなものが多いのですが、ギリシア神話に出てくる美少年ナルキッソスの最後の哀れな姿に関係しています。

ギリシア神話

そのギリシア神話のお話しというのは、

『ナルキッソスは、様々な女性に言い寄られる程、非常に美しい青年でした。
しかし、彼は女性たちに対し、高慢な態度をとっては傷つけ、その行いを見かねた女神は、ナルキッソス自身に恋をしてしまう呪いを彼にかけてしまいます。
そんなこととは露知らずに湖に出かけたナルキッソスは、呪い通りに水面に映った自分に恋をしてしまいます。
自分自身に恋こがれた結果、水面から離れられなくなり、泉に映った自分見続けているうちに1本の花になってしまい、そこで生涯を終えました。
その後、彼がいた水辺にはうつむいたような姿のスイセンが咲いていました。』

ナルキッソスは己愛(ナルシスト)の語源とも言われています。

九州の主な水仙の名所

長崎県・水仙の岡長崎のもざき恐竜パーク(旧野母崎総合運動公園)

福岡県・のこのしまアイランドパーク

佐賀県・風の見える丘公園

大分県・大分農業文化公園(るるパーク)

宮崎県・大塚原公園

熊本県・遠見山すいせん公園

鹿児島県・鹿児島県立吉野公園

金盞花(キンセンカ)

昨今では「キンセンカ=マリーゴールド」の印象が強いですが、ここではもうひとつの説の金盞花(ホンキンセンカ)をご紹介します。

金盞香 きんせんかさく 金盞花 ホンキンセンカ

この花は中近東原産の植物で中国を経て伝来したもので一般的に「キンセンカ」または学名を音読みした「カレンデュラ」の名で流通しています。
花が金色で盞の形が和名の由来となっています。

渡来した品種は二つあって、ホンキンセンカとトウキンセンカです。
その内七十二候で言われる花は「ホンキンセンカ」を指しているのだそうです。
当初、先駆けて渡ってきた可憐で寒さに強いホンキンセンカは「冬知らず」とも呼ばれ、よく育てられていたのですが、江戸後期ごろになると、花が大きなトウキンセンカが盛んに作られるようになり、濃い橙色のあざやかさがうけたのか、比較して地味なホンキンセンカは次第に忘れられていったようです。

つわぶき(石蕗、艶蕗)

つわぶき 石蕗 艶蕗

さてこの時期の植物のお話をもうひとつ。
霜柱が立つような寒さの中、目を楽しませてくれるのがこの時期に花を咲かせる石蕗(つわぶき)です。

その名の由来は、「艶のある葉を持ったフキ」から転じ艶葉蕗(つやはぶき)とする説や、「厚い葉を持ったフキ」から転じた厚葉蕗(あつはぶき)とする説など諸説ありますが、葉が蕗に似ていて艶々しています。
また山陰の小京都として観光地ともなっている島根県の「津和野」という地名は「石蕗の野(ツワの多く生えるところ)」が由来となっているそうです。

つわぶき 石蕗 艶蕗 煮物

その名に「フキ」という言葉が含まれているように鹿児島県や沖縄県を中心に西日本の一部地域ではフキと同じように葉柄を食用として用いられています。
特に奄美大島などの奄美料理では塩蔵した骨付き豚肉とともに煮る年越しの料理の具に欠かせないものだそうです。
沖縄県でも豚骨とともに煮物にして食べるそうです。

食用とするまでには、軽くゆがいて皮を剥き、酢を少量加えた湯で煮直し、1日以上水に晒すなどの灰汁抜きが必要で、フキよりも準備に大変手間がかかるため、鹿児島県などでは、灰汁抜きしたものが市場で売られていたり、灰汁抜きした状態で冷凍保存し、後日調理したりするようです。
また三重県南伊勢町や高知県土佐清水市などでは木枠にツワブキの葉を敷いて押し寿司である「つわ寿司」が作られますが、その香りを楽しむのが主で、葉にはラットに肝ガンをおこし、発ガン性が疑われる、アルカロイドが含まれているため葉そのものは食べません

いずれにしても、緑の葉にパッと目を惹く黄色い小ぶりの花が鮮やかで、寒さで縮こまっていた気持ちを癒してくれます。

ボジョレ・ヌーヴォー

ワイン ボジョレ・ヌーヴォー

この時期よく耳にする言葉に「ボジョレ・ヌーヴォー」がありますが、ボジョレ地区でその年に収穫された葡萄を使ったフレッシュな新酒ワインという意味です。
その解禁日がフランスの法律によって毎年11月の第3木曜日が解禁日(2023年は11月16日)とされています。
しかしながら、流通の関係で実際にはこの日以前に入荷しますが、販売をしてはいけませんし、飲むことも禁止されています。

ちなみに、日付変更線の関係で世界で最も早く解禁日が来るのが日本ですので、本場フランスよりも早く飲むことができます。しかも日本への入荷量はトップレベルです。これも初物好きの日本人ならではといった感じでしょうか。

ボジョレと名乗ることができるワインは、赤であればガメイ種という品種の葡萄、白ならばシャルドネ種に法律で限定されており、白は全体の1%程度の生産量しかないため大変希少です。
ただ、ボジョレ・ヌーヴォーは赤とロゼに限定されているので白はありません

通常、フランスの赤ワインは秋に収穫され、発酵、醸造を経て翌年以降に飲まれますが、ボジョレ・ヌーヴォーは「マセラシオンカルボニック醸造法」という特別な製法によって9月の収穫から2か月程度で発売される出来たてフレッシュなワインです。
そのため、渋みの少ないフレッシュな味わいで、口当たりが軽いワインとなっているので、普段ワインを飲まない方でも飲みやすいワインに仕上がっています。

赤ワインは冷やしすぎると渋みが増すので常温で飲むのが一般的ですが、ボジョレ・ヌーヴォーは渋みが穏やかなので、少し冷やしたほう(冷蔵庫で1時間ぐらいが目安)がすっきりとした味を楽しめるようです。

結詞

自然の厳しさのなか、気高く咲く水仙。
その香りが心に沁みる花の季節が今年もやってきます。

水仙 野母崎 長崎 軍艦島

新型コロナウィルス禍も幾分収束傾向かと思いきや、インフルエンザ等の他の感染症の拡大に伴う医療の逼迫が懸念される中ではありますが、現時点では以前のような「行動制限」は発せられないようですので、やがて来る春をイメージさせる水仙観賞にお出かけになってみたらいかがでしょうか。
寒風にさらされながらも、仄かでありながらも上品な香りがどことなくどんよりとした荒んだ気持ちを優しく癒してくれることでしょう。

小雪 しょうせつ 虹蔵不見 にじかくれてみえず

朝晩の冷え込みもだいぶ増してきましたが、暦は二十四節気は「小雪(しょうせつ)」そして七十二候は小雪の初候「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」へと進んでいきます。

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