紅花栄|べにはなさかう|2023年|紅花|末摘花|源氏物語|紅色

歳時記
スポンサーリンク
紅花栄 べにはなさかう

沖縄では梅雨真っただ中ですが、早くも全国各地で真夏日を記録し、すっかり真夏の気配となった感のこのごろ。
暦は26日より小満の次候「紅花栄(べにはなさかう)」と移ります。実際に紅花が咲き乱れるのはもう少し先の6月から7月です。

スポンサーリンク

紅花栄(べにはなさかう)

紅花 サフラワー 末摘花

七十二候は26日より「紅花栄(べにはなさかう)」となります。紅花が咲き誇る頃という意味です。
ここで言う「紅花」は山形県の県花ともなっていて、あの「紅」の原料ともなっている紅花を指しているというのが一般的ですが、中にはその開花時期から紅花ではなくサツキツツジではないかと言われる方もおられます。

サツキツツジ

しかしながらここでは一般的にいう「紅花」ということでお話を進めていきます。

紅花

紅花は「紅色」の染料としてご存じの方も多いと思われますが、その花はエジプトまたはエチオピアが原産と言われ、シルクロードを辿り中国、韓国を経由して飛鳥時代に仏教文化とともに日本の近畿地方にその栽培法と染色法が伝わり、盛んに栽培されるようになりました。
エジプトでは4千年も前から、女性のオシャレの材料として染色や化粧品として紅花が使われてきました。

そのころ染料のことを藍とよんでいました。「紅(くれない)」という言葉は中国が呉(ご)と言われている時に日本に伝えられたため「呉の藍(くれのあい)」から変化したものだそうです。

その後千葉を経て、江戸時代には現在の特産地の山形にも伝わりました。
江戸時代中期には最上川の水運にも支えられ大々的に栽培されるようになりました。

紅花 サフラワー 末摘花

チアリーダーが使用するポンポンの形に似ており、咲き進むにつれて黄色→オレンジ→紅色へと変化していきます。
その紅花はキク科の一年草、または越年草でその花期は6月末頃から7月にかけてで、咲き始めは黄色い花ですが成長するにつれて徐々に赤色が増していきます。
茎丈は1メートル位で、その花を包んでいる総苞(そうほう)にはアザミの花のように棘があります。

染料として使うのは花びらの部分のみ茎の末端に咲いた花から順に摘んでいくことから別名「末摘花(すえつむはな)」とも呼ばれています。
ご存じの方もおられると思いますがあの有名な「源氏物語」にも登場します。
美貌の女性の登場がほとんどの源氏物語ですが、末摘花と呼ばれた女性は鼻の先が赤いことから光源氏があだ名した女性で、決して眉目秀麗な女性ではなかったようです。しかしながら賢く誠実な性格から末永く交際した女性だったそうです。

紅花油 サフラワーオイル

また紅花は染料のみならず、その種からは食用油も採れ「紅花油」、英名から「サフラワーオイル」と言われています。
さらにこのサフラワー油は空気中で徐々に酸化することにより、固化する乾性油で、精製したものは油絵の溶き油としても用いられています。

紅花の不思議

紅花は一般的には二十四節気の春の「清明」の頃に種まきをし、七十二候の7月上旬「半夏生(はんげしょう)」の頃に開花すると言われています。
その際、まるで「もう花をつけていいか試してくる」と言わんばかりに、紅花畑の中で一つだけ先陣を切って咲き、その後一斉に咲きます
そのことを「半夏の一つ咲き」と呼んだり、山形より北の地方では開花時期がもう少し遅くなりますので「土用の一つ咲き」と言ったりしています。

染料としての紅花

染料としての紅花は、その制作過程は非常に手間がかかりますが、その色彩が素晴らしいため、江戸時代では藍色の染料である阿波(現在の徳島県)の「藍玉」と並ぶ二大染料と言われるまでになりました。

日本では、紅・赤色をアカネの根からとった染料で染めていましたが、ベニバナからとれる紅の染料も、貴重なものとして大切にされるようになりました。とくに身分の高い人の服を染めるための染料や、宮廷に仕える女性の化粧紅として使われたそうです。

紅花栄 べにはなさかう

紅花に含まれる色素の99パーセントは黄色系のサフロールイエローで残りの僅か1パーセントがあの紅色のカルサミンという色素です。

制作過程ではまだ朝露を浴びて棘が柔らかい早朝に花びらだけを摘み取り、摘んだ花びらは黄色の色素が完全に抜けまで何度も何度も手で揉んだり足で踏んだりしながら水洗いをして、そして黄色の色素が全て抜けたら水を与えながら発酵させます。

黄色い色素は水溶性のため、少量であれば一晩水につけておくだけで、抽出することができますが、一方、赤い色素は水に溶けないため、黄色い色素を完全に抜いた後、弱アルカリ水などを使用し、抽出します。

さらにそれを餅のように丸めて天日で干すという手間のかかる工程を経て染料の原材料となる「紅餅」として製品化されます。

そのためその時代には「米の百倍」「金の十倍」という高値で取引されていました。

紅色

紅色 唐紅 韓紅 深紅 真紅 薄紅

紅花から染め上げる濃い「紅色」は深紅(真紅・ふかくれない)唐紅(韓紅・からくれない)紅の八塩とも呼ばれ、染め上げるにも何度も染め重ねなければならないため、その色自体が貴重で、黄金に例えられるほど高価でした。
そのため当時は高貴な方しか着ることが許されなかった「禁色(きんじき)」とされていました。

一般の庶民が紅花染めを身に纏ったのは一回ほど染めた紅色というか桜色に近い色調で、薄紅(うすくれない)というものだったそうです。
またはごく薄くピンク色に染めた「一斤染(いっこんぞめ)」と呼ばれるものでした。

それでも高価だったため精を出して栽培生産に励んだ農民にはとても手の出る代物ではありませんでした。

艶紅

また紅花は繊維を染めるだけではなく、紅花の色素を沈殿させ泥状にした黒みを帯びたとても濃い赤色のものもあります。

紅花を用い丹精込めて仕上げた紅は、意外にも、玉虫色の輝きを放つのが特徴で、これを白磁の皿に入れると光の加減によって金色に輝くことから「艶紅(つやべに)」と言い、口紅などに用いられました。

この玉虫色の紅を下唇にたっぷり重ね塗りし、緑色(笹色)にする化粧法「笹紅(ささべに)」が文化文政の一時期大流行でした。

その際、高価な玉虫色の紅をふんだんに使うことが叶わない庶民の娘たちは、ユニークな裏技をひと工夫。
なんと唇にまず墨をのせ、その上に紅を重ねることで、紅の下から浮かび上がる玉虫色に近い輝きを作り出したそうです。
今も昔も美を探求する乙女心は変わらないようですね。

結詞

初夏といえども陽差しの強さは身体にこたえます。
まだ暑さに慣れていない身体ですので、水分をしっかり摂って体調には気遣ってください。

麦秋至 むぎのときいたる

そのような陽気の中、麦はすくすくと育ち、七十二候は小満の末候「麦秋至(むぎのときいたる)」と移っていきます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました