鴻雁北|こうがんかえる|2024年|雁風呂|花まつり|灌仏会

歳時記
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鴻雁北 こうがんかえる

暦は9日より清明の次候「鴻雁北(こうがんかえる)」となります。冬に越冬のため北から渡ってきた雁が再びシベリアに帰っていく頃という意味です。
またこの時期の風物詩としては、8日お釈迦様の誕生を祝う「灌仏会」、別の名を「花まつり」があります。

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鴻雁北(こうがんかえる)

2024年は4月9日より七十二候は鴻雁北こうがんかえる)となります。
この七十二候は寒露の初候「鴻雁来(こうがんきたる)」と対をなす七十二候で、この頃に越冬のために日本に飛来した雁達が繁殖地であるシベリアペクルニイ湖を目指して帰っていきます。
その距離はなんと約4000キロ

雁行 V字編隊 飛行

鴻雁という字ですが雁は文字通り「ガン」を指しますが、は「ひしくい」と読み、ガンよりも少し大型のガンを指します。
日本ではマガンカリガネヒシクイなどが生息しています。

雁と言えばⅤ字の編隊を組んで飛翔する姿が思い浮かびますが、これにもちゃんと意味があることなのです。

鳥は飛んでいる時、ご存じのように羽を上下に羽ばたかせます。その動作に伴い上昇気流が発生します。そのことで斜め後方のを飛ぶ鳥がその上昇気流を利用することで、体の浮力がさらに発生するため、小さいエネルギーで飛ぶことができるようになります。
そして先頭を交代することでそれぞれが体力を温存することができるのです。そのことが4000キロもの距離の移動を可能にしています。

自転車ロードレース

どこか自転車ロードレースのプロトンの先頭交代のようですね。

雁風呂

皆さんは「雁風呂」という言葉をご存じでしょうか。
あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、古典落語俳句の世界では有名な伝承で、春の季語になっていたり、サントリーの角瓶のCMの題材にも使われています。

雁風呂イメージ

この雁が旅立つときの伝承が素となった「雁風呂」という風習が青森県の津軽地方の外ヶ浜付近に残っているようです(諸説あります)。
雁が旅の途中、海に降りて休むために、一本の木片をくわえて飛び立ちます。日本に辿り着くと浜に木を置きます。
そして春になり、再び北に帰る時に、浜に置いた木をくわえて飛び立っていきます。
しかし浜に残る木片があるのに気づいた村人は、「その残った枝は、この地で亡くなった雁のものに違いない」と思い、亡くなった雁の供養のために、旅人などに流木で焚いた風呂をふるまいました。
実際には、海辺に打ち寄せられた木片をたいて風呂をたてる風習で、雁は渡るときに枝をくわえないし枝に乗らなくても自分で浮いていられますが、雁の苦難と命を思う優しい気持ちが感じられる伝承と風習だと思います。

ちなみに古典落語のあらすじは『水戸黄門一行が立ち寄った飯屋で雁の襖絵に目をとめ、居合わせた商人風の男が雁風呂の話をする。感心して名前を尋ねると、大名貸しで取りつぶしになった豪商淀屋の息子で、貸した金のいくらかでも返してもらおうと旅をしているという。気の毒に思った黄門様が一筆書いてやる。「雁風呂の講釈のおかげで借金が取れますがな」と喜ぶお供に、淀屋の息子は「そらそうや。かりがね(雁金=がんのこと)の話をしたんじゃ」というオチ。』というお話です。

花まつり

この時期の風物詩として、4月8日は宗派を問わず全国的に多くの寺院で一般的に「花まつり」と言われる法要が行われます。
本来は灌仏会(かんぶつえ)仏生会(ぶっしょうえ)浴仏会(よくぶつえ)降誕会(こうたんえ)、竜華会(りゅうげえ)と呼ばれる仏教を開いたお釈迦様の誕生を祝う行事です。

言わばキリスト教のクリスマスのような行事です。しかしながら日本ではクリスマスはどこの家庭でも行いますが、花まつりは余り馴染みが薄いようです。

種々の花で屋根を葺(ふ)き飾った小さな堂の「花御堂はなみどう)」が設けられ、その小堂内に鎮座されたお釈迦様は生まれた時の姿を現したと言われる「誕生仏」で、甘茶を3回かけて誕生を祝います。
なぜ甘茶かと言うと、後述のお釈迦様の誕生時に宣言された際に天にいる九頭の龍が感激して天から芳しい甘露の雨を降らせ産湯を満たしたという伝承に由来しています。
江戸時代までは、甘茶ではなく五色水と呼ばれる香水が使われていたようですが、しだいに甘茶を甘露に見立てて用いるようになったといわれています。

花まつりの由来

この花まつりは旧暦の4月8日にお釈迦様のお母様が出産の為に実家へ帰る途中ルンビニの花園で休息をとっていた時にそのお母様のわきの下より姿を現したという伝承に由るものです。

釈迦誕生仏

そして生まれてすぐに東西南北にそれぞれ七歩ずつ歩み出し右手で天を指し、左手で地を指して「天上天下(てんじょうてんが、或いは、げ)、唯我独尊(ゆいがどくそん)、三界皆苦(さんがいかいく)、我当度之(がとうどし)または吾当安此(がとうあんし)」と宣言されたそうです。

唯我独尊とは

この解釈には様々なものがあり、昨今の世知辛い世の中では「唯我独尊=ただ我のみ独り尊し」を拡大解釈し「自分ほど偉い人はいない」ということを意訳し、「唯我独尊な人」を「うぬぼれている独りよがりな人」を例える熟語として使用される場合もありますが、これは明らかに誤用です。

この「我のみ尊し」は「我こそが唯一人々を救済できる覚者となる」と宣言したというのが本来の解釈でしょう。
また人間は唯一悟りを開けるものだと宣言したとする解釈もあります。

さらに私が一番好きな解釈ですが、あの大ヒット曲の「世界に一つだけの花」です。
人は誰でもこの世に一人だけであって予備の人間はいない。命は貴いものである。私は苦しむ人々を救うことを第一としよう」あるいは「生きとし生けるものは全て尊い命を持つ尊い存在である」という解釈です。

この発した言葉ですら後付けの伝承ですからそれぞれの解釈があっていいかもしれませんが、くれぐれも独りよがりの解釈にならないようにしたいものです。

甘茶

甘茶 アマチャ

一昔前に「アマチャヅル」というお茶が流行った記憶があります。
しかしここで言う「甘茶」とはガクアジサイに似ているユキノシタ科のアマチャを指しています。

この「アマチャ」は生薬にもなっていて乾燥させて煎じて飲むとほのかに甘みのある飲み物になります。
生薬として利用されるのは、ヤマアジサイの甘味変種で、ヤマアジサイの甘味のある成分変異株が民間で発見されたものとされています。
歴史はまだ新しく、江戸時代あたりから民間薬として利用され始めました。
現代では、口腔清涼剤の製造原料としてや、糖尿病患者の甘味代用としても粉末又はエキス末として用いられています。

アマチャヅルも似たような味になりますが、こちらはアマチャとは別物でウリ科の植物です。

アマチャヅル

アマチャヅルには朝鮮人参と同様の有効成分サポニンが70種類以上も含まれていることが明らかになっています。
薬効はと言うと、慢性気管支炎や胃・十二指腸潰瘍の治療に用いられる他、関節リュウマチ、低血圧、動脈硬化、肝臓障害、糖尿病、前立腺肥大、花粉アレルギーなど多くの症状に効果があると言われています。
また、若くて柔らかいつる先は、山菜料理として炒め物や天ぷらなどにもよく利用されます。

結詞

世情はロシアウクライナ侵攻イスラエルとパレスチナの戦争、そして物価高騰など閉塞感漂う日々が続いています。
一日も早く、世界の人々が間違った唯我独尊の考えを持つ指導者の災禍から逃れ、安心して平和に暮らせる時が取り戻せるように、世界平和を「お釈迦様」に祈りたいと思っています。

虹始見 にじはじめてあらわる

このような世情ではありますが、暦は清明の末候「虹始見(にじはじめてあらわる)」と移っていきます。
一日も早くこの陰鬱な世情に虹が架かり、希望の光が見えますように!!

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