
医王寺は、永徳3年(1383年)、岸岳城主・波多安房守源武が創建し、無着妙融大和尚(真空禅師)を開山として迎え建立されました。無着妙融大和尚は、日本曹洞禅宗の開祖である道元禅師第七世の法孫です。
禅宗寺院として600有余年の歴史を持ち、かつては曹洞宗九州三ヶ寺(無着派の三本山)の一つと称されていました。飛騨工が建てたという本堂や坐禅堂、七堂伽藍、勅使門(天皇家、皇室をお迎えした門)は兵火で焼失しましたが、現存している開山堂(本堂横)に、鎌倉末から室町時代初めの建築様式を見ることができます。
ご本尊は木造の薬師如来立像で、平安時代後期の特徴を併せ持つ県指定文化財であり、25年に一度しかご開帳されない秘仏です。
霊場本尊・薬師如来について
薬師如来は、正しくは薬師瑠璃光如来といいます。
日光菩薩、月光菩薩の脇士と十二神将が一体となって、仏の心「慈悲の心」を表しています。即ち、私たちの病気の苦しみを除いて、安楽を与えてくださる現世利益の「ほとけさま」です。
薬師如来が説法している時の手の相(印相)、右手は施無畏印で、わたしたちの色々と恐れおじける心を取り除き、安心させてくれるサインです。
痛いところへすぐ右手が飛びます。これが「手当て」です。手の指には仏の世界でいう仏の名があり、薬指が薬師如来です。施無畏印で薬指を少し前に出すことで薬師如来を象徴しています。
左手は与願印で、平安時代以後の薬師如来は薬壷を持っておられます。
くすりつぼは、人の寿命を延ばす意味をもつといいます。現代人は薬によって病気が治ると頼りがちでありますが、病気を治すのは、私たちの体内にある自然治癒力が最も肝心です。
医療や薬品は、その自然治癒力を高め、援助する役割を持つのであります。「病は気から」とも言います。この治すという「気力」をバックアップしてくれるのが、お薬師様です。
私たちが病気になったとき、その病気をおそれず、医薬の効果を高め、強く生きる力を与えてくださいます。その上に、「病気の善用」も諭していただけるのです。
お薬師信仰を深めることは、健康で、病気を苦にすることなく、安楽で、幸せな日暮らしが期待できるのです。
病の苦しみを救う、寿命を延ばす、そして貧困からの救済等々十二の大願を成就して如来となられた仏様です。
尊像は病気平癒や延命を願って作られたものが多いため、左手に万病に効く薬が入っている薬壺(やっこ)をお持ちになっておられます。
また薬師像は三尊像としてお祀りされることも多く、その際は脇侍に日光・月光菩薩の二尊が従われることが多く、さらに眷属として十二神将も従えることもあります。
薬師の十二大願
1.光明普照
自らの光で三千世界を照らし、あまねく衆生を悟りに導く
2.随意成弁
仏教七宝の一つである瑠璃の光を通じて仏性を目覚めさせる
3.施無尽物
仏性を持つ者たちが悟りを得るために欲する、あらゆる物品を施す
4.安立大乗
世の外道を正し、衆生を仏道へと導く
5.具戒清浄
戒律を破ってしまった者をも戒律を守れるよう援ける
6.諸根具足
生まれつきの障碍・病気・身体的苦痛を癒やす
7.除病安楽
困窮や苦悩を除き払えるよう援ける
8.転女得仏
成仏するために男性への転生を望む女性を援ける
9.安立正見
一切の精神的苦痛や煩悩を浄化できるよう援ける
10.苦悩解脱
重圧に苦しむ衆生が解き放たれるべく援ける
11.飽食安楽
著しい餓えと渇きに晒された衆生の苦しみを取り除く
12.美衣満足
困窮して寒さや虫刺されに悩まされる衆生に衣類を施す
ご真言
おん ころころせんだり まとうぎ そわか
『概略』
芙蓉山 医王寺
(霊場御朱印)

創建
永徳3年(1383年)波多安房守源武 開基
無着妙融大和尚(真空禅師) 開山
宗派
曹洞宗
ご本尊
寺院・霊場御本尊 薬師如来立像 本堂(秘仏)
ご真言
おん ころころ せんだり まとうぎ そわか
住所・連絡先
佐賀県唐津市相知町黒岩183 TEL 0955-62-2609
(地図)
アクセス
【電車・バスの場合】
JR唐津線・本牟田部駅より徒歩18分、またはタクシーで2分
【車の場合】
長崎大分線・長崎自動車道・多久ICより厳木多久有料道路を利用して25分
駐車場あり(大型車10台、普通車50台可)
松浦党の氏族、波多野氏の菩提寺

医王寺は佐賀県中部の北寄りに位置する波多野累代の菩提寺です。
前述の岸(鬼子)岳城主の波多野安房守源武は蘇我源氏を祖とする松浦党の氏族です。
ご本尊は、秘仏の薬師如来で、身丈1.3mで平安後期の作とされています。
その左脇壇に愛染明王が祀られています。

一般には忿怒の相を表しますが、内心は惟違反して愛情の特性を具え、愛着・親愛、なた染色・彩色にも義があるとされています。
佐賀県下では最も古く、尊像の大きさも最大級だそうです。

また、境内で保存されている梵鐘は永和2年(1376年)鋳造で、全国に六口しか残存していない鎌倉後期から南北朝期にかけて肥前国上松浦の山下庄で鋳造された銅鐘の肥前鐘のうちの一つで、総高約83cm、口径49cm、竜頭や駒の爪、乳の形式などの特徴があります。こちらも県の重要文化財に指定されています。
そのほか、貴重な仏画、書画等が多数保管されています。
南無高祖承陽大師道元禅師南無太祖常済大師瑩山禅師

門前には老杉がそびえています。
さらに本堂裏手に設けられた古庭園は花の楽園といった趣です。
正法眼蔵に「最初の座禅は、最初の坐仏なり」とありますが、要は仏(悟り)になることを目的に坐るのではなく、座禅することがそのまま仏の姿であると伝えています。
次回は九州四十九院薬師霊場 第四十二番 妙台山 見明寺をお伝えしてまいります。
願わくは
この功徳をもってあまねく一切に及およぼし
われらと衆生と
みなともに仏道を成ぜんことを 合掌


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