
今日10月13日は「麻酔の日」です。
江戸時代末期の1804年(文化元年)のこの日に、医師の華岡青洲(はなおか せいしゅう)が 曼荼羅華(朝鮮アサガオ)を主成分とする「通仙散」を用い、世界で初めて全身麻酔による乳がん摘出手術に成功しました。

華岡青洲は、中国の華佗という医師が麻酔薬を使った手術で多くの人を救ったことを知り、自ら麻酔薬を作って人々を救いたいという気持ちを持って故郷の紀州平山(現:和歌山県紀の川市)に帰郷し、チョウセンアサガオやトリカブトをもとに麻酔の調合を行い、麻酔の開発を行いました。
10月13日は人類が手術の痛みから解放された歴史的な日であり、日本麻酔科学会はこれらの偉業をたたえて、10月13日を「麻酔の日」と定めました。
華岡青洲
華岡 青洲は、江戸時代の外科医で、欧米で初めて全身麻酔が行われる40年前に世界で初めて全身麻酔を用いた乳癌手術を成功させました。
青洲は医師である華岡直道の長男として紀伊国那賀郡名手荘西野山村(現和歌山県紀の川市西野山)に生まれました。
成人した後、京都に出て医学を学び、長く京都に留まり、医学書や医療器具を買い集めました。
その中でも特に影響を受けたのが永富独嘯庵の『漫遊雑記』であり、そこには乳癌の治療法の記述があり「欧州では乳癌を手術で治療するが、日本ではまだ行われておらず、後続の医師に期待する」と書かれているのを知ったことが後の偉業の伏線となります。
さらに青洲は、乳癌を根治するほど大きく切るのは、患者が受ける耐えがたい痛みを解決しなければ不可能であり、麻酔法の完成こそ、癌の医療を進歩させる最重要の課題と考えました。

それから、3年後、父が病に倒れたことにより帰郷し、後を継いで開業しました。
と同時に手術での患者の苦しみを和らげ、人の命を救いたいと考え、麻酔薬の開発を始めました。
研究を重ねた結果、薬用植物ではあるが、強い有毒成分を含む毒草としても有名である曼陀羅華の実、草烏頭(トリカブト)を主成分とした6種類の薬草に麻酔効果があることを発見しました。
動物実験を重ねて、麻酔薬の完成までこぎつけましたが、人体実験を目前にして行き詰まってしまいました。
そこで、実母の於継と妻の加恵が実験台になることを申し出て、数回にわたる人体実験の末、於継の死、加恵の失明という大きな犠牲の上に、全身麻酔薬「通仙散」(別名麻沸散)を完成させたいわれています。
そして1804年(文化元年)10月13日、大和国宇智郡五條村の藍屋勘という60歳の女性に対し、通仙散による全身麻酔下で乳癌の摘出手術に成功しました。
その業績は後に、同郷の和歌山県出身の小説家である有吉佐和子によって、小説『華岡青洲の妻』として1966年(昭和41年)新潮社から出版されベストセラーとなりました。
この小説により、医学関係者の中で知られるだけであった青洲の名前が一般に認知される事となりました。
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