18日より立秋の末候の「蒙霧升降(ふかききりまとう)」です。深い霧がまとわりつくように立ち込める頃です。
全国あちらこちらで梅雨末期のような豪雨が降り続き、一方、残暑厳しき毎日が続いています。
通常ですと残暑の中にも朝晩、特に早朝は空気が多少冷えてきて山間部や水辺では空気が冷えて一面、白い霧に覆われるような光景に出会うこともあります。
蒙霧升降(ふかききりまとう)
蒙霧升降の「蒙霧」は「もうむ」と読み、もうもうと立ち込める濃い霧を指し、「升降」は「昇降」と同義で湿気を含んだ空気が夜間の冷えた空気によって濃い霧となって地面に舞い降りてくる様を表しています。
皆さんも避暑地の高原の中にある湖などでそんな光景を眼にしたことがあるかと思いますが、日中は真夏の日差しが降り注ぐ中、早朝のほんの一瞬、幻想的な風景を作ってくれるのもこの時期です。
そんな霧ですが、雲と同じように大気中の水分が飽和状態に達し、水蒸気が細かな水滴となって地表や水面の上に浮かんでいる状態を言いますが、水滴が光を反射・吸収・散乱させて白く見えます。
ちなみに地面に接しているものを「霧」、そして地面に接さず空中に浮かんでいるものを「雲」と呼んでいます。
その「霧」には様々な種類に分類されていて、以下に簡単に列挙しておきます。
霧の種類
発生時間
朝霧・夕霧・夜霧など
発生場所
山霧・川霧・谷霧・海霧・盆地霧・都市霧・沿岸霧など
発生の仕組み
放射霧・移流霧・蒸発霧・滑昇霧・前線霧・上昇霧など
九州では霧の名所として大分県の由布院や宮崎県の高千穂などが有名で、写真愛好家などを集めていますが、いずれも「盆地霧」が主体で、由布院の観光名所「金鱗湖」は「蒸発霧」です。
さらに視程が1km以上・10km未満の場合は「靄(もや)」と呼び、視程が1km未満の場合に「霧」、そして陸上で100m、海上で500m以下の場合には「濃霧」と呼んでいます。
かき氷
このような残暑続く日々の中、早朝の霧は一服の清涼剤のように「涼」を感じさせてくれますが、同様に厳しい日差しをよけて日陰で口に含んだ冷たい「かき氷」の一口も同じような至福のひとときをもたらしてくれます。
そこでそんな夏ならではの楽しみのひとつ、美味しいかき氷について少しお話します。
さて「かき氷」は現代人ばかりの楽しみではなかったようです。
日本書紀に氷室の記述が!
わが国最古の歴史書である「日本書紀」には額田大中彦皇子(ぬかたのおおなかつひこのみこと)が狩りに出かけた折、氷室を見つけ、その所有者である豪族に保存法、使用法を聴き、その氷を宮中の天皇に献上し大変喜ばれたという記述があります。
それ以降、蔵氷、賜氷という制度が起こり、氷室を管理する役職まで設けられたとのことです。
当時は製氷技術などは勿論無い時代ですから冬期に池で水を凍らせそれを切り出し、麓の穴蔵や洞窟の奥に入れておきました。そして冷却効果を高めるためにたくさんの氷を入れ、断熱効果のため「おがくず」などを氷にかけておいたようです。
今ブームになっている天然氷もこの製法に倣って作ったものでその口どけの良さは絶品です。
清少納言の枕草子にもかき氷の件が!
また清少納言の「枕草子」の「あてなるもの(上品なもの、よいもの)」の段に
「削り氷にあまずら入れて新しき金鋺(かなまり)に入れたる」と書かれています。
現代語では「削り氷にシロップのような蔓草の一種である甘葛(あまがづら、あまづら)の汁をかけて新しい金属の器に入れてあるのが実に優雅です」とでもなるでしょうか。
かき氷の歴史
そこでザックリとかき氷の歴史をまとめてみましょう。
明治2年・・・私たちに身近なかき氷は、アイスクリームを発祥させたと伝わる店が氷水店を開店。
明治4年・・・函館・五稜郭の堀で生産された天然氷が「函館氷」と銘打って京浜市場に登場し、輸入氷より品質も良く安価であったため商品化に成功。
明治11年・・・それに便乗した粗悪な氷の販売を取り締まるため内務省が「氷製造人並販売人取締規則」を制定。衛生検査に合格した氷の生産地及び販売者を示した幟や看板を掲出することを義務付けました。その幟が現代でも店頭に下げられている「氷」の幟の発祥です。
明治20年・・・削氷機が発明される。
昭和初期・・・削氷機が普及することによりかき氷が一般化。
戦前は削った氷に砂糖を振りかけた「雪」・砂糖蜜をかけた「みぞれ」・小豆餡をのせた「金時」が主流でした。
戦後になってかき氷専用のシロップ(氷蜜)が普及して現在に至ります。
九州・沖縄のご当地かき氷3選
最後にそんな「かき氷」、各地に「ご当地かき氷」なるものも存在しているようですが、九州・沖縄のご当地かき氷をご紹介しておきましょう。
熊本県のご当地かき氷「コバルトアイス」
熊本の銘菓の蜂楽饅頭のお店が出している「コバルトアイス」。国産蜂蜜を使った自家製シロップに練乳をミックスし、涼しげなコバルトブルーに色付けしたちょっと見ブルーハワイのようなかき氷。
鹿児島県のご当地かき氷「しろくま」
もう知名度は全国区の「しろくま」。かき氷にみかんやパイナップルの缶詰の果物を盛り込み小豆をのせ、練乳をかけたもので、最近ではカップ入りやアイスキャンディーも出ています。
沖縄県のご当地かき氷「ぜんざい」
「ぜんざい」は本土のぜんざいとは違い、小豆や金時豆(こちらの方が一般的)を甘く煮てその上にかき氷をかけたもの。煮汁を凍らせたものをかき氷にしているお店もあります。
結詞
他の各地にもご当地かき氷があるようですので、新型コロナウィルスが5類相当に分類され、4年ぶりに行動制限の無い今年の夏は、猛烈な暑さの中、旅先や帰省先でのご当地かき氷が夏の風物詩となり旅の思い出にもう一ページ加えてくれることでしょう。
そのような今年の夏ではありますが、暦は二十四節気の「処暑」へ、そして七十二候はその初候「綿柎開(わたのはなしべひらく)」と変わり、暦では少しずつ秋に向かって進んでいきます。
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