芒種|蟷螂生|ぼうしゅ|かまきりしょうず|2023年|蟷螂の斧

歳時記
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芒種 ぼうしゅ

新型コロナウィルスも感染法上の分類が5類となり、幾分以前のような日常が戻りつつありますが、気のせいか依然として燻り続けているような気がします。

またいよいよ東海以西で梅雨入りし、鬱陶しい時期となりました。寒暖差も激しく、体調を崩される方も多いようですが、暦は6日より二十四節気は芒種(ぼうしゅ)そして七十二候はその初候の蟷螂生(かまきりしょうず)へと変わっていきます。

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芒種(ぼうしゅ)

この馴染みの薄い二十四節気の「芒種」ですが、芒(のげ)のある作物の種を撒いたり収穫したりする時期という意味です。
この芒(のげ)とは、麦などの実の先端から一本のヒゲのようなものを見たことがあると思いますが、それを指しています。

芒 のげ

暦便覧にも「芒(のげ)ある穀類 稼種(かしゅ)する時なればなり」とあり、この稼種の「」とい漢字には植える・耕す・実るという意味を含んでいます
現代の田植えは人手不足などから5月のゴールデンウィーク期間に離れて暮らしている親族、親せきなどが参集して行われることが多いようですが、昔は5月の中旬から6月の始めごろ麦の刈り入れを終えて、そしてその間に育てていた苗を本田に植えていました。

東海以西で梅雨入りし、鬱陶しい時期となりました。
一番早く梅雨入りした地域の「沖縄」では、小満の記事でも書きましたが、「小満」と合わせてこの「芒種」の時期を「スーマンボースー」と言って雨の多い時期、すなわち「梅雨」と同じ意味で使われています。

田植え

芒種の頃に行われていた田植えは昔から神聖な行事として、田の神様が男性であることから女性が邪気を祓い身を清めて、田の神様に五穀豊穣の祈りを捧げ田植えに向かったそうです。
現代でも御田植祭田楽が奉納されるなど様々な神事が各地で続いています。
とりわけ西日本では田植えをする若い女性=早乙女(さおとめ)が大太鼓や小太鼓、笛や鉦(かね)を打ち鳴らし、田植え歌を歌いながら設けられた田の神様の祭壇を前に苗を植えていきました。
それを今でも伝え続けているのが重要無形民俗文化財のみならずユネスコの無形文化遺産にもリストアップされている広島県山県郡北広島町で例年ですと6月の第1日曜日に行われる「壬生の花田植」です。
この行事も今年は通常開催となりました。

田植え 壬生の花田植え

農耕の重要な一翼を担っていた牛たちも美しく飾られ「飾り牛」となってこの神聖な行事に並びます。

ちなみに九州では福岡県の住吉神社(3月7日に終了)や宮崎県の田代神社(花火大会は中止)などで五穀(米・麦・粟・豆・きび)の豊穣・豊作を祈る「御田祭(おんださい)」が行われます。

蟷螂生(かまきりしょうず)

蟷螂生 かまきりしょうず

二十四節気の「芒種」とともに七十二候は「蟷螂生(かまきりしょうず)」に移ります。

カマキリが卵からかえる頃という意味です。
いよいよ子供たちに大人気の夏の昆虫たちが目でも耳でも季節を彩ってくれる季節です。

蟷螂・かまきり・カマキリ

蟷螂 かまきり カマキリ 祈り虫 拝み虫 蟷螂の斧

実はかまきりの一生は凡そ半年の儚い命です。
あの鎌のような前脚(名前の由来のひとつともなっています)や仲間まで食べてしまう共食いやかえるやトカゲまでムシャムシャと食べてしまう姿からかまきりは苦手だと言われる方も多いと思いますので、ここではかまきりの良い一面を選んでお話ししておきたいと思います。
ちなみにその物騒に見える前脚を持ち上げた姿は見ようによっては愛らしく、どこか祈っているようにも見えることから「拝み虫」・「祈り虫」の別名もあります。

カマキリは農作物にとっては益虫

ご存じのようにかまきりは肉食の昆虫です。しかも生きているものしか食べないそうです。
したがって作物には目もくれず、そこにいる作物を食い荒らす生きている昆虫たちのみを食べてくれる農家にとっては誠にありがたい生き物なのです。

蟷螂の斧

故事成語の中に「蟷螂の斧(とうろうのおの)」という言葉があります。
時は春秋時代、斉国の君主である荘公が馬車で出かけている途中、道の真ん中に一匹のかまきりがいて、逃げもせずに前足の鎌を大きく振り上げて馬車の車輪に向かってきたそうです。御者の「これはカマキリといって、進むことは知っていても退くことを知らない虫です。自分の力量もわからず、敵に向かっていくのです」という言葉に対し、荘公は「この虫がもし人間であったなら、必ず天下に名をとどろかす勇武の人になるであろう」と言って、かまきりの勇気を讃え、わざわざ車を迂回させて、かまきりをよけて通ったという故事があるそうです。
その話が日本にも伝来し、かまきりは勇気ある虫の代表とされ、戦国兜にかまきりの立物を取りつける者もいました。

しかし、その後、現在の日本では意味が転じてしまい、己の無力を知らない無謀さを揶揄する言葉として用いられることになってしまっていますので、誠に残念な話です。

衣替え

この時期、制服やユニホームを冬服から夏服に替え、冬仕様から夏仕様へと替わる皆さんも多いかと思います。
6月1日は季節の変化に応じて衣服を着替える日で、明治以降、官庁・学校・企業など制服を着るところでは6月1日10月1日を「衣替えの日」としているところが多いようです。
ちなみに、温暖な気候の南西諸島(鹿児島県の諸島と沖縄県)では、5月1日11月1日が「衣替えの日」となっています。
しかし現在では、衣替えは強制的なものではなくあくまで習慣で、学校においては2週間から1ヵ月間の移行期間が設けられています

この衣替えという風習も「夏と冬の式服を変えて着用する」という中国の宮廷の慣わしが平安時代の頃に日本へと伝わり室町時代、江戸時代に定着した習慣です。
衣類を入れ替える際に大切なことは虫干しや洗濯などはもちろんですが、手持ちの衣料の総点検として行ってみるのはいかがでしょうか。

衣替え

快適に生活していくために、衣類をチェックするのに季節の変わり目は、よいタイミングです。
押し入れやクローゼットの奥から、もう絶対着ない(着られない)洋服もたくさん出てくるかもしれません。
また着られるけど着ないものなどは思い切って処分するも良し、思いのあるものはフリマなどに出品してどなたかに着ていただくのもSDG’sの観点からも一つの選択肢です。
梅雨明けごろに衣類を整理したのち季節が変わり、新しいファッションが増えると鬱陶しい季節の中、ちょっと気分もリフレッシュできるかもしれません。

結詞

腐草為蛍 くされたるくさほたるとなる

次回七十二候は芒種の次候「腐草為蛍(かれたるくさほたるとなる)」と暦は移ります。そして雑季の一つ「入梅」となります。梅雨のないと言われる北海道を除き、全国的に梅雨入りするのも間近かもしれません。

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