彼岸|ぼたもち|おはぎ|沖縄の彼岸|社日| 社日祭|雑節

彼岸 風物詩
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彼岸

2024年は3月15日は節分や八十八夜と同じ雑節の「社日しゃにち)」です。
また17日より同じように雑節の「彼岸ひがん)」迎えます。
彼岸は、春は春分の日、秋は秋分の日をはさんで前後3日の7日間を言い、「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉をよく耳にされると思いますが、この時期、目白押しの「雑節」の中では馴染みの深いものではないでしょうか。
そろそろ各地から桜の開花宣言も聞かれるようになり、いよいよ本格的に春らしく暖かい日を迎えるのはもうすぐです。
そこで、今回は「彼岸」「社日」についてお話ししていきましょう。

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彼岸とは

彼岸

まずはなじみの深い「彼岸」からお話していきます。
「彼岸」は仏教伝来とともに伝わったことと日本古来より行われてきた太陽信仰とが融合して今日のわが国での彼岸の風習となりました。

仏教的にはインドのサンスクリット語の「パーラミター波羅蜜)」という言葉が中国に伝わった時に漢訳された「到彼岸」に由来しています。
「パーラミター(波羅蜜)」はもともと完成する、到達するという意味がありそれを仏教的に修行を積み重ね、悟りの境地に達するという意味だとされています。
本来は一年中修行を積み重ね、悟りの境地に達しようとすることが大切なのですが、凡人にはそう簡単にはできません。
そこで年二回、私たち凡人も集中して修行に励みましょうという期間とされました。

修行と言うと僧侶の方々が行われる難行苦行を想像してしまいますが、そういうことではなく仏教で言われる善行の「六波羅蜜」を実践してみましょうということです。

六波羅蜜とは「布施(ふせ)」「持戒(じかい)」「忍辱(にんじょく)」「精進(しょうじん)」「禅定(ぜんじょう)」「智慧(ちえ)」の六つの善行のことを指します。
皆さんも「六波羅蜜寺」や「六波羅探題」という言葉を聞いたことがあると思いますが、いずれもこの「六波羅蜜」からきている名称です。

この善行を彼岸の中日である春分の日や秋分の日をはさんだ前後3日に一つずつあらためて実践してみましょうということが仏教で言う彼岸の意味です。

その六つの善行は私のような凡人にはとても奥が深く一言で説明するのは不可能ですので私なりの解釈をここで綴っておきたいと思います。

1.布施(ふせ)

布施

布施とは私たちがすぐに連想するのは、法事などの時にお寺やお坊さんにお支払いするお金を想像しますが、もちろんそれもお布施の内ですがそればかりを指すのではないそうです。
もっと身近に、周りの人々に対してちょっとした手助けや心遣いなどの親切な行動を起こすのも立派なお布施だそうです。
例えば、日本で一番多いと言われる「鈴木」さんという名字の方よりも多いと言われる、身近にいる障害者の方を見かけたら声をかけ、ちょっとした手助けするのも立派なお布施になるのだそうです。
このように特定の方々ばかりではなく、全ての方々に対してちょっと心配りをして「親切」の二文字を実践したいと思っています。

2.持戒(じかい)

お坊さんたちは「受戒」といって自ら戒律(してはいけないこと)を宣言してそれを実践していくそうです。まさに有言実行の世界です。
このように自ら決めたことを必ず実践する、強いて言えば「言行一致」の実践がこの二つ目の善行に当たります。
決して嘘をつかず虚言や妄言をはかず、誠実に行動し一日を過ごすことを心掛けたいと思います。

3.忍辱(にんじょく)

単純に言えば耐え忍ぶことなのですが、ただ単に耐え忍ぶのではなく、世の中思い通りにならないことが多い中、それも穏やかな心をもって受け入れることが大切だそうです。
ムッとしたら心の中で「穏やかに穏やかに」とつぶやきながら過ごす一日を過ごしたいと思います。
新型コロナウィルス禍の中では日々の暮らしやSNS上でのヘイトスピーチなど、まさに忍辱の時と言えるかもしれません。

4.精進(しょうじん)

まさしく努力そのものです。今やらねばならないこと、やるべきことを整理してひとつひとつ着実に実行する日を作りたいと思っています。

5.禅定(ぜんじょう)

この禅定という善行の解釈が一番難しく感じたのですが、心を鎮め自らを省みながら行動することによって他人に対しての譲る気持ちや許す心が芽生えるそうですので「自己中心」にならず他者を思いやる心をしっかりと自らに意識させて過ごす位置にを設けたいと思います。

6.智慧(ちえ)

般若心経

智慧とは知恵と少し違い、仏教ではお釈迦様の教えを言うようです。
一方、「悪知恵」などと言うように、知恵には良い知恵と悪い知恵があります。
仏教のみならず他の宗教の教えにも生きる術として様々な「智慧」書かれています。まさに生き方の根幹、本質のような金言が多く含まれています。
ですから宗教は哲学のジャンルに含まれているのかもしれません。
あらためてもう一度自らの生き様を省みてしっかりと勉強、修養する一日も作りたいと思います。

日本独特の風習

さてお盆はご先祖様の霊をお家に迎えて供養する日ですが、それに対して「彼岸」は自らが修行する期間ですので、西方浄土におられる神様や仏様、そしてご先祖様の霊に自らの精進の報告をする日ですので、そのために「お中日」にお墓参りに行くことや法要を執り行うという風習が定着してきました。
しかしこれは日本だけの風習でインドや中国ではありません

墓参り

それはもともと古来より日本では自然の中にたくさんの神様が存在するという考え方や太陽信仰があります。
農耕民族の日本人は、作物を育てる太陽に、自分たちを守る先祖に、自然界すべてに感謝してお供え物をお供えし、お日様に願い、毎日の日照、天候、自然に感謝の気持ちを表す「日願」という習わしがあり、一年で昼と夜の時間が同じになる神秘的な一週間を古来よりとても大切な日として、春は豊穣を祈り、秋は収穫を感謝してきました。

それが仏教伝来とともに時期の重なる「彼岸」と融合し、春分の日や秋分の日は農事の節目として農耕の安全や五穀豊穣を願ったり感謝したりすることも含めた今日の「彼岸」になったようで神仏を分け隔てなく信心する日本人には受け入れやすかったのでしょう。

ぼたもちとおはぎ

ぼたもち おはぎ

堅い話はここまでにして、お彼岸というと思い浮かべるのが「ぼたもち」「おはぎ」です。一般的にはその時期に咲く花から春は「牡丹餅(ボタモチ)」秋は「お萩(オハギ)」と呼ばれていることが多いようです。

しかし基本的には小豆餡、もち米、うるち米と同じ食材を使ったお菓子です。
その中でもわずかな差異といえば小豆は秋に収穫されるので皮が柔らかいので皮ごと全て使う餡にし、春は保存している小豆のため皮が堅くなっているので皮を取り除いた「こし餡」を用いることぐらいでしょうか。

ところでそのぼたもちやおはぎに夏や冬の呼び名もあるのをご存意でしょうが。
それは夏は「餅をいつ搗(つ)いたかわからない」が転じて、暗闇の中いつ着いたかわからないことにかけて「夜船」。
冬は月(搗き)を知らない北向き窓にかけて「北窓」という通人の呼び方もあるそうです。

沖縄の彼岸

本土とは風習の違う沖縄での「お彼岸」はどうなのでしょうか。
ご想像の通り、やはり大きく違いました。
沖縄では基本的に祖先崇拝がベースで親族揃ってお墓の前に参集することが多いのですが、一部門中(一門)や一部家庭を除いては、お彼岸は基本的にはお墓参りはしません

とは言え「お彼岸」は沖縄にとっても大切な年中行事として違った形で現代にも引き継がれています。

沖縄の多くの家庭では家の仏壇にお供えをして「拝み」を捧げるのが一般的で、仮にお墓参りをしても親族一同が集まらず比較的小規模でお参りをし、さらにお参りに行ってもすぐにお家に戻り仏壇に祈りを捧げます。

仏壇 沖縄

それは「屋敷の御願ヤシチヌウグァン)」といって屋敷におられる五柱の神様に祈り、日ごろの守護に関して感謝を捧げます。
その五柱というのは「ヒヌカン(火の神)」をはじめ、敷地の東西南北の四隅におられる「ユンシヌカミ」、門前にいる「ジョウヌカミ」、トイレの神様の「フールヌカミ」、そして玄関と門の間におられる「ナカジンヌカミ」です。
その神様をお供え物を携行しながら回り祈るそうです。
この行事は春の彼岸を「二月彼岸(ニングァッチヒガン)」秋の彼岸は「八月彼岸(ハチグァッチヒガン)」と言って年二回旧暦の2月、8月に行います。

社日・社日祭

土地神 産土神

さて15日は「春の社日」、土地神様も降りてきて翌日よりは農業も本格的にスタートしていきます。

社日しゃにち)」とは生まれた土地の神様である「産土神うぶすながみ)=」をお祀りする日です。
社日は春秋の二回あり、春は「春社(しゅんしゃ・はるしゃ)」といい秋は「秋社(しゅうしゃ・あきしゃ)」と言っています。
それぞれ春分の日、秋分の日に最も近い「戊(つちのえ)の日」が社日となります。

2024年の春社は3月15日、そして秋社は9月21日が社日となります。
春の社日には豊作を祈り、秋の社日には収穫に感謝します。
社日も、もともとは中国の風習ですが、日本に伝わり様々なものに神様が存在する日本人の思考回路には非常に受け入れられやすい風習だったと思います。
そして土地の神様は田の神様とも融合し今日に至っています。

田の神

筥崎宮(福岡)の「社日祭」

筥崎宮 福岡

博多の夏の風物詩となっている「博多祇園山笠」の期間中の行事ごととして有名な筥崎宮の神域である箱崎浜の「お潮井とり」がこの社日の祭でも行われます。
早朝5時から17時まで箱崎浜の真砂をいただくことが出来ます。
社日の真砂はとりわけ神聖なものとされ、多くの参拝者が「テボ」と呼ばれる竹で編まれた小籠を片手に箱崎浜の真砂をいただきに訪れます。

箱崎浜 筥崎宮 福岡

春の社日祭(お潮井取り)のご案内 3月16日(水)開催
五穀豊穣・除災招福・家内安全等を祈る春の筥崎宮社日祭のご案内です。

 ●日 時 3月15日(金) 
 ●時 間 午前5時~午後5時(予定)
 ●場 所 筥崎宮お潮井浜

【ご参拝の皆様へ】

感染拡大防止にご配慮いただきますようよろしくお願い申し上げます。

 ●祈願の受付並びお守り授与所は、通常通り行っております。
 ●「咳エチケット」を踏まえ、ご参拝時はマスクを着用下さい。ご祈願祭をお受けになる際はマスクを着用したままで結構でございます。
 ●ご参拝の際、人との間隔(ソーシャルディスタンス)をとってお参り下さい。
 ●体調のすぐれない方はご参拝をご遠慮下さい。

一刻も早い事態の収束と、皆様のご健康を心よりご祈念申し上げます。

筥崎宮公式HPより引用

でぼ お潮井取り

この真砂を戸口や玄関などに供えたり、我が身に振りかけ清めたり、田畑に巻いたりして豊作を願ったりしています。

結詞

治聾酒 じろうしゅ 日本酒

春社の日に飲むお酒は耳の不調を治してくれるという言い伝えをご存じでしょうか。
春社の日に飲むお酒を「治聾酒じろうしゅ)」と言いますが、もちろんお酒の種類や銘柄ではありません。春社の日に飲むお酒そのものをいいます。

この言い伝えの真偽のほどは定かではありませんが、年々歳々一定の周波数の音が聞きづらくなったりしてきます。
何とかこの言い伝えを信じて「聴こえ」が良くなってくれたらと思う今日この頃です。
私同様この言い伝えにあやかろうと思ったあなた、くれぐれも飲みすぎにはご注意召され!(自戒を込めて)

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