しっかり祝い、しっかり祈る沖縄の旧正月・2024年版

船起こし フナウクシー 風物詩
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旧正月 沖縄

旧正月といえば、中国や台湾の「春節」やベトナム「テト」などのアジアの諸外国の旧正月が知られていますが、
日本でも「旧正月」が行われている地域があります。
現在では基本的には本土復帰前に琉球政府によって「新正月一本化」が推奨された「ヤマトソーグヮチ(大和正月)」もと呼んで新暦のお正月なのですが、糸満市や名護市などの漁村や農村を中心に沖縄全域で旧正月(沖縄ではソーグァッチといって旧暦のお正月)の風習が色濃く残っています。
沖縄では「正月が三度ある」と言われているようですが、三度だけではなく正月に関連する行事が目白押しです。

*ここで書きました沖縄の旧正月の行事は、最大公約数的に書きましたので、地域差があり、地域、家庭ごとにそれぞれ独自の伝統や習慣があることはご了解ください。

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沖縄の旧正月

新暦12月頃 冬至(トゥンジー)

太陽の日照時間が最も短くなるトゥンジー(冬至)は、翌朝から太陽が「生まれ変わる」とし、新しい年の節目として、この日も「小正月」とも言われ祝われてきました。
豚肉や里芋などの入ったトウンジージューシーを仏壇、火の神にお供えします。

旧暦1月1日 旧正月

2024年の旧正月は2月10日です。
現在、沖縄の社会も「太陽暦(新暦)」をベースに動いていますが、旧正月などの行事や神事などは「旧暦(太陰太陽暦)」で行われています。その中でも、ご先祖様にまつわる年中行事のほとんどが、旧暦になぞられた祈願や祭事が基になっています。

宴会料理 沖縄

沖縄の旧正月は暦では祝日とはなっていませんので学校や会社はお休みではなく普通に出勤・通学は行われています。商店も一部お休みのところもありますが、ほとんどは通常通り営業しています。
なぜ、沖縄では現代も旧暦が根付いているのかといえば、中国文化の影響を受けたこともありますが、それ以上に沖縄が四方を海に囲まれた島という立地条件から、台風や暑さなどの厳しい気象条件の中で漁や農耕を行うために、潮の干満や種まき・収穫のタイミングを知るために旧暦が無くてはならないものであったと考えられます。さらに本土から離れた地で、豊作・豊漁や健康への祈願など、文化が独自色を強めながら育まれ、現代まで息づいているのではと思います。

旧正月行事の流れ

昔の沖縄の旧正月は、「若水」を汲みに行くところから始まります。
正月の早朝、家の男子が、近くの川や井戸で水を汲み、この水を、家のヒヌカン(火の神)や床の間にお供えし、仏壇には、その水を使ったウチャトー(お茶湯)をお供えます。
そして、家族の額にその、若水を中指にとり、眉間に3回軽く撫でるウビナディ(お水撫で)をし、健康と若返りを祈願します。
しかし現代では簡略化され、現在の「若水」は、各家庭の「正月の朝の水道水」でいいとされています。

垣花樋川 カキノハナヒージャー

本土でもお正月の時に行っている地方もありますが、元日の朝に初めてくみ上げる水のことを「若水」といって神聖な水でこれを飲むと健康、豊年、幸福が訪れるとされています。
そのお水取りの場所は那覇の首里にある宝口樋川(たからぐちひーじゃー)、宜野湾市・森の川、南城市・垣花樋川(かきのはなひーじゃー)など本島内でも十数か所あります。
井戸や泉からまだ明けやらぬ早朝に水を汲んできて家の火の神様や神棚・床の間に供え、仏壇にはお茶にして供えます。

旧正月重箱料理

沖縄の旧正月は、本土のお正月の「おせち料理」のような決まったお料理がありませんが、沖縄では行事の時の定番料理の「重箱料理」やラフテーやクーブイリチー(細切り昆布の炒め煮)、ソーメンなどの縁起の良いとされる食材が並びます。

沖縄 重箱料理

定番の重箱料理の内容は基本的には以下の9品です。

1.カステラかまぼこ
2.白かまぼこ
3.てんぷら(沖縄風でどちらかというとフリッターに近い)
4.豚の三枚肉の煮もの
5.揚げ豆腐(厚揚げ)
6.ターンム(田芋)
7.ごぼう
8.こんにゃく
9.結びこんぶ

並べ方は地域や行事によって違います。品数は5品もしくは7品、9品、11品といった奇数にするのが決まりだそうです。
そしてお雑煮のあたるものが豚肉の内臓=モツを何度もゆでこぼし下処理をしてお吸い物のようにしたあっさりした汁物の「中身汁」やお祝い料理のイナムドゥチ(白みそ仕立ての汁物)などがそれにあたるようです。

中身汁

旧正月飾り

正月の飾りとしては本土のような門松やしめ縄などはありません。
その代わり「若松」を門口に一対さしたり、神棚や仏壇には南天などの縁起の良い木の若木やマキ、大根の花、松などを飾ったりします。

正月の飾りつけとして、ヒヌカンや床の間、仏壇には、本土の鏡餅に相当する「ウチャヌク」という餅粉を水で溶いて蒸した「白餅」を三段にしたお供えの下に、赤白黄、三色の色紙「ウカリー」を敷き、炭と昆布、みかんもお供えします。
この大・中・小のお餅は「【天・地・海】を意味し、我々の住む世界を表す」とも「各時代を生きてきたご先祖様を表す」とも言われています。

ウカリー

この「ウカリー」の3色にも、意味があり、赤は血の色(健康を祈願)、黄は黄金(お金に恵まれますよう)白は無垢(運が開けるように)という、願いが込められています。

炭と昆布

また、炭と昆布は、炭は何年経っても、変わらないことから、家庭の変わらぬ繁栄を象徴し、昆布は「よろこぶ」にかけ、喜びを表しています。

旧暦1月2日もしくは3日 初起し(ハチウクシー)

現在では仕事のはじめとして3日に行うところが多い。農村では初畑(ハチバル)、漁村では「船起こし」(フナウクシー)といいます。

船起こし フナウクシー

旧暦は月の満ち欠けを基本にした暦ですので、潮の満ち引き、潮位など海との関りが深い暦ですので糸満市では停泊中の漁船に大漁旗や国旗などを掲げ、今年一年の豊漁満足や航海安全を祈願します。その光景はとても華やかです。

旧暦1月2日~13日 年日祝い(トゥシビー)

数えで13歳、25歳、37歳、49歳、61歳、73歳、85歳と12年目ごとにめぐってくる生まれ年祝いで 旧正月中の生まれ年と同じ干支の日に行われます。

旧暦1月4日 火の神迎え(ヒヌカンウンケー)

毎年年末の旧暦12月24日には天へ帰っていた火の神様が、旧暦1月4日にこの世へ帰ってきますので、この日にヒヌカン(火の神)をお迎えします。

旧暦1月7日七日正月・七日節句(ナンカヌスク)

沖縄でも「七品雑炊・菜雑炊(ナージューシー)」をいただき、旧正月の胃の疲れを癒しながら、一年の家族の健康を祈願します。
沖縄本島では少ない風習ですが、八重山諸島では旧暦1月7日をグソー(後生=あの世)のお正月としてきました。
沖縄の旧正月では7日を片付けの日とする(節句直し=スクヌーシ)としつつ、「トゥシビー」を終えていない家では、小正月に片付けるパターンが増えました。

旧暦1月14日 十四日正月(トゥカユッカー)

沖縄では正月の節目として、旧暦1月14日を「小正月(ショーグァッチグァー)」としました。
毎月1日・15日がヒヌカンの拝みになっていることもあり、14日を小正月、15日をヒヌカンへの感謝の日とする家庭が多いです。

旧暦1月15日 小正月(ソーグァッチグァー)

その昔の沖縄では満月になる旧暦1月15日に旧正月を祝ったと言われます。そこで旧暦1月15日を小正月とする地域もあります。
ウムニー(芋を煮て練ったもの)骨付き豚肉などを仏壇に供えます。

旧暦1月16日 十六日祭(ジュウルクニチ)

後生の正月・あの世の正月と言われ、お墓にお供え物して先祖の霊をなぐさめます。

「十六日祭」の由来は、琉球王国時代に、元日から15日までの諸行事を済ませた家来が、16日に故郷の父母に会いに帰省するも、父母は他界しており、年頭の辞を墓前で述べたのが由来だと言われています。

ジュウルクニチーが盛んなのは宮古島地方や八重山地方では最も大きな行事で、この日には多くの人が里帰りし、清明祭(シーミー)のようにお墓の前に親戚が集まり、重箱料理を供え、先祖供養します。
沖縄本島に住む宮古、八重山出身者は那覇市の三重城でそれぞれの出身離島に向かって供え物を並べ、先祖へ祈りをささげます。

十六日祭

ジュウルクニチーの習慣が薄い地域でも、亡くなってから1年以内の人がいる家庭は例外。新暦の正月や旧正月は質素に行い、このジュウルクニチーを「ミージュウルクニチー(新十六日祭)」、あるいは「ミーサー(新霊)」と呼び、お墓参りをして霊をなぐさめます。

旧暦1月20日 二十日正月(ハチカソーグヮチ)

正月の完結の日で、「終わり正月(ウワイソーグァッチ)」などとも言われ、この日に正月飾りのかたづけをするところもあります。
旧正月のいろいろな飾り物を下ろし仏前とヒヌカンにスーチカー(塩漬け豚肉)やターウムニー(田芋煮)などのご馳走を供えて正月祝いを締めくくります
この日のイベントとしては那覇市辻で行われるジュリ馬行列です。

結詞

沖縄の旧正月はいかがでしたでしょうか。
冒頭にも書きましたが、県域の広い沖縄県、一言に旧正月と言ってもその地域それぞれに日にちや内容も若干異なるようです。
二十日正月(ハチカソーグヮチ)に行われると書きました「ジュリ馬行列」については、別記事にてまた改めてお伝えしたいと思います。

ジュリ馬行列

さらに、狭いと言われる日本列島ですが、北から南、種々様々な風物詩があります。
その地、その地の絶景を楽しむのも、もちろん素敵な体験ですが、その地ならではの風物詩に触れてみるのも素晴らしい体験になると思います。

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