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霜降 霎時施 こさめときどきふる 歳時記
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霜降 霎時施 こさめときどきふる

朝晩の冷え込みとともに本格的な秋の到来を感じられる季節となって七十二候も28日より「霎時施(こさめときどきふる)」の候となります。時々小雨が降り、「一雨一度」と言われるように、一雨ごとに気温が下がってきます。この一雨一雨が、まるで私たち人間や動物たちに「さぁ、冬支度を始めなさい」と告げているようです。

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霎時施(こさめときどきふる)

霎時施 こさめときどきふる

ぱらぱらと通り雨のように降り、じきに止んでしまうような小雨が思いがけず降っては止む頃という意味ですが、この時期、大陸からの冷たい寒気が日本海や東シナ海との温度差によって暖められ、それによって次々と細かい対流雲が発生し晴れたり曇ったり時には雨または雪を降らせたりします。

このようにパラパラと通り雨のように雨が降ったり、かと思えば傘を広げる間もなく青空が顔を出したりとこんな天気を「時雨(しぐれ)・霎(しぐれ)」と言います。

また気温も秋晴れの下、軽く汗ばむほど気温が上がる日もあれば、寒気から吹き込む北風によってぐっと冷え込む日も出てきます。

女心と秋の空

秋の空

余談ですが、そんな天気から即座に思い浮かぶ言葉に「女心と秋の空」があります。

実はこの「女心と秋の空」の女心の部分は「男心と秋の空」だったのをご存じでしょうか。

江戸時代ころまでは、男心は秋の空のように変わりやすい、つまり女性に対する愛情も移ろいやすく浮気の多さを表していたものだそうです。当時は女性が浮気することに対しては非常に厳しく罰せられたのに対して、男性の浮気に対しては比較的寛容だったので、浮気な男性、女性に気が多い男性には気をつけなさい!という戒めの意味が込められていました。

それが明治から大正時代になると徐々に女性の地位も向上し強くなってきつつありましたので、それを境に感情の起伏が激しく気持ちが変わりやすいことなどから「女心」に変遷していったようです。

しぐれ煮

冒頭にも書きましたが、天気ことわざに「一雨一度」というのがあります。

秋は雨が降るごとに一度ずつ気温が下がるという意味なのですが、雨の後つまり低気圧が通過した後は大陸の高気圧つまり寒気が張り出してきて雨の前より少し気温が下がります。この繰り返しで秋が深まり紅葉も進み、木々の彩りが鮮やかになっていきます。

そんな冷え込みが増した夜の晩酌、日本酒の熱燗の「肴」に佃煮にショウガを加えた料理の「しぐれ煮」はいかがでしょうか。

この「しぐれ煮」、名前の由来は諸説ありますが、主だったものでは

1. いろいろな風味が口の中を通り過ぎることから一時的に降る「時雨」に喩えられた。

はまぐり

2. しぐれ煮につかう蛤(ハマグリ)が最もおいしくなる時期だから

3. 短時間で仕上がる調理法が、降ってはすぐにやむ時雨に似ていることから

などだそうです。

巡る月日はいつも速足と感じる歳ともなると、澄んだ秋の夜空に浮かぶ十三夜の美しい月を心穏やかに待ちながら、しぐれ煮を肴に熱燗をキューっと一杯、そんな食生活から秋を楽しむのもまた一興かと思います。煌々と冴える月の姿を愛でるひとときを、晩秋の夜長にゆったりと愉しんでみてはいかがでしょうか。

時雨忌

さて「時雨」まつわるお話しでは、最後に俳人として有名な、あの「奥の細道」の松尾芭蕉と時雨繋がりのお話しをしたいと思います。

旧暦の10月12日は俳人松尾芭蕉の亡くなられた日「芭蕉忌」ですが、別名「時雨忌」とも言います。

松尾芭蕉

芭蕉は降ったり降らなかったりの不安定な時雨の気候を人の浮き沈みになぞらえ句材として数多くの句を詠んでいます。

時雨が降りそうな空模様は鬱陶しくどこかうら寂しく人生の儚さを感じさせる時節ですが、こんな日は心静かに今までのことを振り返り、そして思いを馳せるには逆に打ってつけの時節であるかもしれません。

旅人と 我名呼ばれん 初時雨

十三夜

十三夜

翌29日は旧暦9月13日、「後の月」やこの時期収穫される作物にちなみ「栗名月」「豆名月」とも呼ばれる「十三夜」です。

十三夜は日本独自の風習で、秋の収穫祭の一つではないかとも考えられ、宇多法皇(天皇在位887~897年)が9月の十三夜の月を愛で「無双」と賞したことから譲位された醍醐天皇(在位897~930 年)の御代の919年に開かれた観月の宴が風習化したのが始まりともいわれています。

十五夜の頃は台風や秋雨の時期で天気がよくなく、「中秋の名月、十年に九年は見えず」という言葉がある一方、十三夜の頃になると、秋晴れが多く美しい月が見られることから「十三夜に曇りなし」と言われています。

十三夜は十五夜に次いで美しい月だとも言われ、十五夜だけでなく、十三夜も昔から大切にされていました。

そのため十五夜だけお月見をした場合、「片見月」あるいは「片月見」といって縁起がよくないとされていたそうです。

十三夜にのお月見も、お月見団子(13個か3個または12個)や神の依り代とされる「ススキ」が供えられる他、秋の七草、枝豆や栗なども供えられます。

月夜

月ぬ美しゃ(つくぃぬかいしゃ)」という有名な八重山の唄の歌詞に

『月(つくぃ)ぬ 美しゃ(かいしゃ) 十日三日(とぅっか、みっか)

美童(みやらび) 美しゃ(かいしゃ) 十七つ(とぅ、ななつぃ)』

というのがありますが、その意味は、

月が美しいのは十三夜

娘が美しいのは十七歳のころ

十三夜の月は、満月になる前の月で、未完の美に対する日本人ならでは感性が響いてきます。

結詞

もみじは「もみず」が語源で、霜や雨などの冷たさに揉み出されるように色づくから、という意味だといいます。秋の時雨に濡れ、この時期だけの錦色に染まった自然の中に秋色の装いでお出かけになってみてはいかがでしょうか。

楓蔦黄 もみじつたきばむ 大興善寺

朝晩の冷え込みを実感できるこの頃、暦は霜降の末候「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」と移っていきます。

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