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菊花開 きくのはなひらく 歳時記
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菊花開 きくのはなひらく

10月13日から七十二候は寒露の次候・菊花開きくのはなひらく)になります。菊の花が咲き始める頃という意味です。
空も高く澄み渡り爽やかな空気に包まれる季節となりますが、こんな時期の晴れを「菊晴れ」と言います。
実りの秋も最盛期を迎え、伊勢神宮を中心にその年に収穫された新穀(初穂)を天照大神に奉げる感謝祭である「神嘗祭かんなめさい)」が行われます。

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菊花開(きくのはなひらく)

菊花開 きくのはなひらく

菊と言えば、春の桜と並んで日本を象徴する花ですが、もともとは薬草や観葉植物として奈良時代に中国から伝来したものです。

平安時代より宮中など高貴な上流貴族の間で愛好され、特に鎌倉時代になって後鳥羽上皇はその意匠を好み、身の回りの品々にその意匠として用いたことから天皇または皇室の紋章となったと言われています。

その菊が江戸時代に入りさらに品種改良が重ねられ一般庶民の観賞用植物して普及していきました。
菊の花の花言葉は「高貴」「高潔」「高尚」などです。
菊は「仏花」としての印象も強く地味な印象もありますが、その愛好家も多くいます。

菊は花の中で最も品格あるものとされ「百花の王」と称賛されてきました。
その品種も多岐にわたり、その仕立て方も数多くあり、とても奥深い植物のひとつなので、ここでは割愛することとして、暮らしの中にある「菊」のお話をしていきたいと思います。

菊は薬用として伝来したと書きましたが、その用い方としては、「菊湯」「菊枕」「菊茶」などがあります。

湯船に菊を浮かべ浸かったり、菊を入れた枕で眠る風習もあり、血行促進や心穏やかにし心地良い眠りを誘う効果があります。現在でも、ハーブバスやアロマテラピーに菊が用いられているようです。

菊茶 菊花茶

中国ではカモミールにもどこか似た菊の花を乾燥して作るお茶で普通のお茶と同じように煎じて飲むのだそうです。
めまい、眼の疲れ、解毒、消炎、鎮静作用、高血圧などに良いそうですが、中国では「花茶」にも分類されていて、その見た目の美しさも一役買っているのかもしれません。

菊酒

さらに菊酒という飲用方法もあり、本格的には菊をお酒に漬け込んで作ったものをいいます。果実酒を漬けるのと同様に密封瓶に菊の花びらとその10倍の量のホワイトリカーを入れ、お好みの量の角砂糖を加え、ひと月ぐらい経つと飲み頃になります。 それが面倒くさいという方は日本酒の上に菊の花びらを浮かべて、香りを楽しみながらいただくのも一興。秋の夜長月でも眺めながら、風流な気分を味わってみるのはいかがでしょうか。

さらには食用として上品な香りとほろにがさを持った菊の花弁を食べるようになり、江戸時代よりニーズが広がると品種改良も盛んになります。
そんな折、「阿房宮(あぼうきゅう)」など苦みの抑えられた品種も産まれてきました。
おひたしやサラダなど生でも茹でても、この季節ならではの味わいが楽しめます。また刺身のつまなどは見た目の美しさのみならず菊の抗菌作用から食中毒の予防にもなっています。
ところで皆さんは山形の特産物の淡い紫色の食用菊の「もってのほか」をご存知でしょうか。

もってのほか


花びらが筒状なため茹でてもしゃきしゃき感が残り、ほのかな甘さとほろ苦さを併せ持つ山形の高級特産品となっています。
「もってのほか」とは一風変わったネーミングですが、「天皇の御紋を食べてしまうとはもってのほか」または「もってのほか(思っていたより)おいしい」というところから名付けられたようです。
能の演目に「菊慈童」というのがあります。菊の霊験により不老不死となった美少年のものがたりで、菊に埋もれる庵のなかで700歳となりながらも、永遠に美しい少年が、深山の精霊のように華麗に舞うといった神秘的な曲目です。
先ほど紹介した「もってのほか」は「延命楽」という品種ですが、こんなところからも薬草としての菊と長寿との関連性を感じられます。

最後に、毎年九州各地でも、菊の品評会や菊まつりが行われますが、そんな菊を愛でるのにうってつけなところをご紹介しておきます。

祐徳稲荷神社 菊まつり

1.福岡県 太宰府天満宮・春日神社・宗像大社・小倉城跡
2.佐賀県 祐徳稲荷神社
3.大分県 薦(こも)神社
4.熊本県 菊地の菊まつり
5.鹿児島県 仙巌園
6.宮崎県 都城島津邸

それぞれ菊祭り等の開催期間があり、ましてや今年は新型コロナウィルス禍の中、開催中止や規模縮小等もありますのでインターネット等で事前に詳細をおしらべの上お出かけになることをお勧めします。

神嘗祭(かんなめさい)

伊勢神宮 五十鈴川

神嘗祭は『古事記』の神話で天照大御神が天上の高天原で初穂を食べられたことに由来する祭礼で、その年に収穫した新穀と作物を天照大御神(あまてらすおおみかみ)に捧げ、その恵みに感謝する収穫祭です。
伊勢神宮のもっとも重要な大祭で、例年10月15日〜17日に行われ、その際、外宮先祭(げくうせんさい)といって、外宮から儀式が始まり、同様の儀式が1日遅れて内宮でも行われます。

15日の輿玉神祭(おきたまのかみさい)から始まり、神職が神嘗祭の奉仕にかなうかどうかをお伺いする御卜(みうら)が行われ、
16日の夜に由貴夕大御饌(ゆきのゆうべのおおみけ)、そして17日朝には由貴朝大御饌(ゆきのあしたのおおみけ)と進んでいきます。
この大御饌とは立派な食事という意味で、タイやアワビ、伊勢エビなどの海の幸や、レンコン、大根、柿など山の幸、神田で収穫された新米やお酒をお供えします。
さらに17日の正午、天皇陛下の勅使(ちょくし)が参向し、幣帛(へいはく・神へのお供え物)の奉納が行われます。同時に、宮中でも神嘗祭が行われ、神嘉殿において伊勢神宮を遙拝されます。
そして夕方には、日本古来の音楽・舞が披露される御神楽(みかぐら)が行われます。
その後宮中では11月23日に新嘗祭(にいなめさい)という天皇がその年に獲れた新穀を召し上がる祭祀が行われます。

結詞

菊で思い浮かぶのが旧暦9月9日に行われる「重陽の節句(ちょうようのせっく)」ですが、2020年は10月25日がその日に当たり、その頃は菊も花盛りの頃を迎え「菊の節句」とも言われています。その日が近づきましたらまた改めてご紹介したいと思っています。

蟋蟀在戸 きりぎりすとにあり


さて徐々に秋も深まる中七十二候は寒露の末候「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」移っていきます。

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