
永興寺は、標高280メートルの人里離れた閑雅な地に建つこの寺は、かっては叡興寺と号していたとされ、その創建は、永観2年(984年)とも貞観2年(860年)ともいわれ、比叡山の僧による開山というだけで、それが誰なのかは特定できていません。
ご本尊千手観音は、恵心僧都(源信)の作とされていますが、伝えるところでは、慶長6年(1601年)、僧尊隆によりこの寺は中興され、同9年(1604年)、筑後一円の国主となった田中吉政が寺領60石を寄進し、元和7年(1621年)には、柳川藩主立花宗茂も同様の寄進をしていて、正保3年(1646年)立花忠茂が東照大権現(徳川家康)の霊祠(やしろ)を寺域内に建立し、立花家代々の藩主の崇敬を集めたとされています。
深山幽谷の気満つる境内には、九重層の石塔、板碑や虎御前建立の曽我兄弟の供養塔が建っています。
九州西国霊場~より
『概略』
巨泉山 永興寺
(御朱印)

創建
開基 永観2年(984年)または貞観2年(860年) 比叡山の僧
宗派
天台宗
ご本尊
千手観世音菩薩像(九州西国霊場ご本尊)
ご真言
おん ばざら だるま きりく (天台宗系)
千手観世音菩薩について
別名 千手千眼観自在菩薩(せんじゅせんげんかんじざいぼさつ)とも言い、生きとし生けるものすべてを漏らさず救う、大いなる慈悲を表現する菩薩です。千の手と手のひらの千の眼によってどんな願いも見落とさず、悩み苦しむ衆生を見つけては手を差し伸べる広大無限な功徳と慈悲から「大悲観音」、または観音の王を意味する「蓮華王」とも称されます。
蓮華王とは泰三界曼荼羅で観音が配される場所である「蓮華部」の中で、最高位となっています。
阿修羅や金剛力士などが属する二十八部衆を配下とします。
千手観音は、人々を救うための手が多い分、得られるご利益も多いと考えられています。そのため、災難除け、病気平癒などあらゆる現世利益を網羅しているのです。
そのご利益です。
厄災厄除・苦難除去・病魔退散・悪疫守護・諸願成就・平穏無事・頭痛平癒・病気(難病)平癒・奇病快癒
さらに、夫婦円満や恋愛成就、安産や子宝成就にも功徳があるとされていて、後生善処(ごしょうぜんしょと読みます。亡くなったあと来世でも幸せに過ごせることを言います。)などのご利益もあります。
また六観音(聖観音・千手観音・馬頭観音・十一面観音・准胝観音または不空羂索観音・如意輪観音)の一つに数えられ餓鬼道に迷う人々を救うといわれています。
餓鬼道に生まれ変わる人は、生前に自己中心的な生活を送っていたり、欲望のままに生きていた人々で、ノドの渇きも潤せず、食べることが叶わないため渇きと餓えに苦しみ続けると言われています。
住所・連絡先
福岡県みやま市瀬高町大草902 TEL 0944-63-7016(九州西国霊場HPより)または0944-63-8472(九州西国霊場巡礼の旅より)
(地図)
アクセス
JR鹿児島本線「瀬高」駅から車で約15分
九州新幹線「筑後船小屋」駅から車で約20分
九州道みやま柳川インターよりから約12分
ご詠歌
くらきより くらきにまよう ひとごころ ながきひかりの かげたのむなり
千年を超える歴史を誇る古刹 第十七番札所 永興寺
十六番札所の清水寺から車で10分の距離にある「永興寺」
山道を分け入るようにして登り、古僧都(こそず)山の中腹にあり清水寺と違って観光客もおらず霊場感あふれるお寺です。
それもそのはず、創建は984年とも860年とも伝えられ、いずれにしても1000年以上の歴史を持つ古刹ということになります。
こじんまりした境内には宝形造銅板葺きの本堂(観音堂)建ち、静かに参拝者を迎えてくれます。

ご本尊は千手観世音菩薩様で九州西国霊場では十七ヵ寺が千手観世音をご本尊としています。
境内には九重層の石塔や

富士野の狩場で父親の仇を討った曽我兄弟の供養塔や五輪塔が諸国巡礼中の虎御前により建立されたそうです。

また静かに佇む苔むした石仏も点在し、寺の歴史を偲ばせてくれます。

南無根本伝教大師福聚金剛
本文中に登場する虎御前(とらごぜん)は、鎌倉時代初期の遊女で曾我祐成の妾と伝わっています。
富士の巻狩りの際に起こった曾我兄弟の仇討ちを描いた『曽我物語』で、この物語を色づけ深みを持たせる役割をしています。
また鎌倉幕府の公式歴史書である「吾妻鏡」にも出てくることから実在した女性とされています。
ところで、車のナビゲーションを使用されてご参拝に行かれる際、細い林道から来るルートに誘導される場合があるそうですので、ご住職のお薦めになるルートがHPに載っていましたので、ご参照ください。

次回は九州西国霊場「第十八番札所 山本山 観興寺」をお伝えしていきます。
願ねがわくは
この功徳くどくをもってあまねく一切いっさいに及およぼし
われらと衆生しゅうじょうと
みなともに仏道ぶつどうを成じょうぜんことを 合掌
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