
油山観音として親しまれている正覚寺は、敏達天皇の代(572年)に天竺から渡来した清賀上人が、白椿の大樹に千手観音を刻み安置したのにはじまると伝えています。その清賀上人が日本ではじめて椿の実から油をしぼり精製した事が、「油山」と呼ばれる名前の由来になったとの事です。
九州西国霊場~より
『概略』
清賀山 正覚寺
(御朱印)

創建
572年 清賀上人
宗派
臨済宗 東福寺派
別称
油山観音
ご本尊
聖観世音菩薩坐像(九州西国霊場ご本尊)
ご真言
おん あろりきゃ そわか
聖観世音菩薩について
別名、観音菩薩(かんのんぼさつ)とも呼ばれ、人々を常に観ていて救いの声(音)があれば瞬く間に救済する、という意味からこの名が付けられ日本でも多く信仰されました。
六観音の一つに数えられ、地獄道に迷う人々を救うとされています。
苦しんでいる者を救う時に千手観音や十一面観音などの六観音や三十三観音など、様々な姿に身を変えて救いの手を差し伸べます。
それら変化観音と区別するために変化観音に対して、変化しない観音をいい、また一番もとの観音(本来の姿の観音)という意味で、聖観音と呼ばれるようになりました。
単独で祀られることも多いのですが、阿弥陀如来の左脇侍として勢至菩薩と共に三尊で並ぶこともあります。
ちなみに般若心経は観音菩薩の功徳を説いたものです。
住所・連絡先
福岡県福岡市城南区大字東油山508 TEL 092-861-4006
(地図)
アクセス
福岡市営地下鉄七隈線「福大前駅」下車、徒歩30分
西鉄バス 油山団地口バス停下車、徒歩20分
福岡市天神より、車で30分
駐車場あり
ご詠歌

まつがえに みどりをそえて ちよやちよ かわらぬのりの ためしなりけり
福岡市民憩いの場所に(第三十番札所 清賀山 正覚寺 油山観音)
福岡市民の憩いの場であり市民の森として親しまれている油山(山頂の標高は597m)の中腹で、最寄りのバス停からでも、徒歩30分はかかるところに油山観音はあります。
参道の入り口に着くともうそこから森閑とした空気に満ち溢れています。
日本ではじめて椿の実から油をしぼり精製した事が、「油山」と呼ばれる名前の由来になったとの事です。

苔むした石畳の参道を登り詰めると変わった山門が出迎えてくれます。

この山門、新羅式石門と言われ、設置されている案内板によれば、黒田忠之公建立の楼門跡に明治23年(1890年)古代朝鮮の技法で建立されたそうです。
一人の修行僧が精魂こめて作ったものなのですが、本来三層の屋根が二層になっているのは建造中力尽きその結果の作と言われています。
正面の本堂にご本尊の聖観世音菩薩座像(国指定重要文化財)が安置されています。
そのお顔立ちはとても美しく優しく感じられました。

正覚寺では毎年2月1日に、カビの形で実りや風水害を占う「油山粥開き」が行われます。
この伝統行事は江戸時代より続くものだと伝わります。
小正月から15日間、本堂にお供えされた塩を入れずに炊いた小豆粥の状態でその年の農作物の豊凶を占うもので、同時に五穀豊穣、家内安全の祈願をする伝統行事で、一時は途絶えていましたが、福岡藩4代藩主・黒田綱政が元禄8年(1695年)に再興したと伝わっています。

お参りを済ませ庫裡の方で納経をお願いすると「書いている間、そちらの鐘楼の鐘を鳴らしてくださいね。幸福の鐘といわれているんですよ」と・・・
お言葉に従い鐘を撞くと心地よく周囲の空気と共鳴して響き渡ってくれました。
南無釈迦尼仏
正覚寺には、もうひとつユニークな雲雀(ひばり)堂と額が掲げられた観音堂があります。
あの国民栄誉賞を受賞した「美空ひばり」さんをお祀りしたお堂です。
堂内にはもちろんひばりさんをイメージした「ひばり観音」が安置されています。
命日である毎年6月24日に慰霊法要を行います。

ひばり観音とは、平成元年6月24日、多くの人々に愛され、惜しまれながら52歳で亡くなられた国民的歌手、美空ひばりさんの歌「悲しい酒」を、福岡市在住の彫刻家・松尾宇田(まつおうでん)さんが平成3年2月ラジオから流れてきたのを聴き、強く感動し、ひばりさんの魂に触れたような気がして、その気持ちを像として表すことを決意しました。
まるで一刀三礼のごとく「悲しい酒」を繰り返し歌い、涙を流しながら、四五晩夜を徹して一気に作り上げたそうです。
そして「ひばり観音」と命名されました。

福岡の地は済生会福岡総合病院で一度は命をとりとめたり、多くのファンに埋め尽くされた公演場所など縁の深いところでもあります。
それ故、その福岡市街や博多湾を一望する景勝地である油山観音正覚寺に奉納されました。
美空ひばり観音立像の像高は蓮台も書めて高さ68cmの青銅製で、未来永劫の菩薩が青銅で美人で慈愛と品位に満ちたお姿をされています。
お堂の横にはジュークボックスがあり、「川の流れのように」「愛燦々」など美空ひばりさんの往年の名曲が1曲100円で聴けるようになっています。

そのお堂を背に観月楼展望台に立てば福岡を一望のもとに眺めることが出来ました。

次回は九州西国霊場「第三十一番札所 屏風山 鎮国寺」をお伝えしてまいりますが、鎮国寺は九州西国霊場第三十一番札所であるとともに、九州三十六不動尊霊場第三十四番札所や九州三十三観音霊場第一番札所として打ち始めのお寺であり、九州八十八所百八霊場第八十八番・百八番として結願のお寺ともなっています。そこで今回は九州西国霊場にスポットを当てた記事としてお伝えしてまいります。
願ねがわくは
この功徳くどくをもってあまねく一切いっさいに及およぼし
われらと衆生しゅうじょうと
みなともに仏道ぶつどうを成じょうぜんことを 合掌
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