
不動寺のある場所は、かつて真言宗大乗院というお寺が存在した地でありました。不動寺はそのような仏縁の深い場所に築かれています。
由来によると、大隅半島にある西大寺の鮫島弘明住職が薩摩の地に祈祷道場を求めて行脚していた時、夢に不動明王の霊示を受けたそうです。
急いでこの地を訪ねてみると茂みの中に石仏が放置されていました。
鮫島住職はこの石仏を仮に安置し、後の昭和35年に仮道場を興され、これが不動寺の始まりです。
『概略』
大乗山 不動寺
(御朱印)

創建
昭和35年(1960年)
宗派
高野山真言宗
ご本尊
不動明王立像
(お御影)

ご真言
の(な)うまく さんまんだ ばざらだん せんだ まかろ しやだ そわたや うんたらた かんまん
不動明王について
不動明王は、密教の教主、大日如来が衆生教化のため変身した明王の中では最高位の仏様です。
普段は柔和な大日如来が、優しさだけでは通用しない人々を救済するために、あえて怒りの形相をしています。
邪悪な相手には徹底的に厳しく、人が間違った道へ進もうとした時には、正しい道へと戻れるように諭してくれる存在です。
迷いの世界から煩悩を絶ちきり、仏の道を教えてくれる尊い存在なのです。
空海が日本にもたらした最初のお姿は両目を見開く恐ろしい形相で、おさげ髪のお姿でした。その後19世紀になると、「不動十九観」が定められ左目をやや閉じ、右目を開ける天地眼、上唇を下歯で噛み下唇を上歯で噛むといった特徴となりました。
そして倶利伽羅剣という宝剣と悪い心を縛り上げることにより、善き心を呼び起こさせるための羂索と呼ばれる網をもっておられます。
さらに背後には炎が立ち上げる火焔光背があります。
不動十九観とは
不動明王を心に浮かべる時、その見た目の特徴を表すもので、これを満たしたものを心に描くと理想的な不動明王の姿が描ける考えられます。
1.大日如来の化身であること。
2.真言中に「ア」・「ロ」・「カン」・「マン」の四字があること。
3.常に火生三昧に住していること。
4.童子の姿を現わし、その身容が卑しく肥満であること。
5.髪の毛の上に七沙髻があること。
6.左に一弁髪を垂らすこと。
7.額に水波のようなしわがあること。
8.左の目を閉じ右の目を開くこと。
9.下の歯で右上の唇を噛み、左下の唇の外へ出すこと。
10.口を固く閉じること。
11.右手に剣をとること。
12.左手に羂索を持つこと。
13.行者の残食を食べること。
14.大磐石の上に安座すること。
15.色が醜く、青黒であること。
16.奮迅して忿怒であること。
17.光背に迦楼羅炎かるらえんがあること。
18.倶力迦羅竜くりからりゅうが剣にまとわりついていること。
19.矜羯羅童子と制多迦童子の二童子が侍していること。
住所・連絡先
鹿児島県鹿児島市稲荷町36-57 TEL 099-247-2233
(地図)
アクセス
JR日豊本線鹿児島駅から市バス鼓川(つつみかわ)下車、徒歩5分。
国道10号線を磯庭園を通って、鳥越トンネルを抜けた二つ目の信号を右折、 清水小学校を経て池ノ上町交差点を右折し、さらにバス停を右折する。
境内に駐車場あり。
ご詠歌
罪とがを 慈悲の智火にて 焼き尽くす 不動の寺ぞ ありがたきかな
不動尊の霊夢に導かれ(第四十四番 不動寺)
不動寺とその眼下に見える清水中学校の敷地は、室町時代に島津貴久が伊集院の荘厳寺をここに移し、真言宗大乗院を開基した場所です。
大乗院は、周辺の真言宗寺院を統括し、この地方では最大の勢力を誇っていました。
しかし明治の廃仏毀釈により跡形もなく廃絶していまいました。
時は経ち、大隅半島の西大寺の鮫島弘明住職が薩摩に祈祷道場を求めて行脚していた時に不動明王の霊夢に導かれ伊集院町の荘厳寺跡を訪れていました。
その後何度か訪ねたのですがその荘厳寺がどこに移転したのかも判らないまま時が過ぎていってしまいました。
そして昭和35年いよいよ鹿児島の市内に道場を創建しようとしていた時またも霊示によってここ稲荷町に導かれてそうです。
すると茂みの中に放置されていた石仏を見つけここが荘厳寺を移転して大乗院となった場所だということが判明したのでした。
弘明和尚によってこうして日護摩祈祷所、加持祈祷道場として不動明王院が建立されたのが不動寺の始まりだそうです。
本堂手前にまったく民家の造りの庫裡があり、永い間その二階を本堂として日護摩が厳修されていましたが、平成8年に本堂が落慶し寺院としての面目を一新しました。
その本堂は入母屋造で妻入、若干の向拝がついています。
内陣にはご本尊の不動明王をはじめ弘法大師などが安置されています。
南無大師遍照金剛

次回は九州八十八ヶ所百八霊場第四十五番札所「金竜山 大歓寺」をお伝えします。
願ねがわくは
この功徳くどくをもってあまねく一切いっさいに及およぼし
われらと衆生しゅうじょうと
みなともに仏道ぶつどうを成じょうぜんことを 合掌
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