
今日11月13日は「うるしの日」です。
日本漆工芸協会が1985年(昭和60年)に日本の伝統工芸である「漆」の美しさを知ってもらうことを目的に制定されました。
日付は、平安時代、文徳天皇の第一皇子・惟喬これたか親王が京都・嵐山の法輪寺に参籠し、その満願の日のこの日に「漆(うるし)」の製法を菩薩より伝授されたという伝説からだそうです。
この日は、以前から漆関係者の祭日で、親方が職人に酒や菓子などを配り労をねぎらう日でした。
うるしについて

漆(うるし)とは、ウルシ科のウルシノキ(漆の木:Poison oak)やブラックツリーから採取した樹液を加工した、ウルシオールを主成分とする天然樹脂塗料です。
塗料とし、漆工などに利用されるほか、接着剤としても利用されます。

うるしの語源は「麗し(うるわし)」とも「潤し(うるおし)」ともいわれています。

最も一般的な用途は塗料として用いることです。
漆を塗られた道具を漆器といいますが、黒く輝く漆塗りは伝統工芸としてその美しさと強靱さを評価され、食器や高級家具、楽器などに用いられています。
漆は熱や湿気、酸、アルカリにも強く、腐敗防止、防虫の効果もあるため、食器や家具に適しています。
一方、紫外線を受けると劣化し、また、極度の乾燥状態に長期間曝すと、ひび割れたり、剥れたり、崩れたりします。
漆を用いた日本の工芸品では京漆器がよく知られており、漆塗りの食器では、石川県の輪島塗(後述)などが有名です。
竹細工の籠を漆で塗り固めるもの(籃胎)や、厚く塗り重ねた漆に彫刻を施す工芸品(彫漆)もあります。
輪島塗(被災地応援を込めて)
輪島塗(わじまぬり)とは、石川県輪島市で生産される漆器で、国の重要無形文化財として指定されています。
木地に、生漆と米糊を混ぜたもので布を貼って補強する(布着せ)や、生漆と米糊、そして焼成珪藻土を混ぜた下地を何層にも厚く施した「丈夫さ」に重きをおいて作られているのが特色の漆器です。
堅牢な漆器である秘密は、表面からでは見えないところに発揮される職人の技にあります。
そのほか「研ぐ」「磨く」などにも職人の丁寧な仕事が施され、ひとつの輪島塗の漆器をつくる手数は100以上とも言われています。
そんな手間のかかる輪島塗は、それぞれの工程を専門の職人たちが分業することで、産地として漆器の生産をつづけてきたそうです。

輪島での漆器の生産は古くまで遡ります。
同じ能登半島の三引遺跡(七尾市)からは6800年前の漆製品が発見されています。
輪島では平安時代の遺構である屋谷B遺跡で漆製品が発掘されています。
輪島塗の特色を備えたものとしては、山地を挟んで輪島の南側にある穴水町の西川島遺跡群御館遺跡(室町時代前期)で珪藻土を下地に用いた椀が発掘されています。
現存する最古の輪島塗は、室町時代の1524年(大永4年)作と伝わる重蔵神社(輪島市河井町)旧本殿の朱塗扉といわれています。
現在のような輪島塗の技術が確立したのは江戸時代前期の寛文年間と伝えられています。
能登半島北端にある輪島は北前船などの寄港地であり、この時期には既に海運の利を生かして販路を拡大していたようです。
また陸路での行商もおこなわれており、堅牢さが評判の輪島塗は日本各地で使われていました。
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