8月22日 藤村忌

今日は何の日

今日8月22日は「藤村忌」です。

1943年(昭和18年)のこの日、明治~昭和時代の詩人・小説家である島崎藤村しまざき とうそん)が脳出血のため71歳で亡くなりました。最期の言葉は「涼しい風だね」だったそうです。
この日には、島崎家の菩提寺である岐阜県中津川市の永昌寺(えいしょうじ)において、関係者らにより「藤村忌」の法要が営まれます。
また、長野県小諸市にある藤村記念館の前では、藤村の遺徳を偲び、藤村文学愛好者らにより花や歌が捧げられます。

島崎藤村について

島崎 藤村(しまざき とうそん)は、日本における詩人又は小説家
本名は島崎 春樹(しまざき はるき)といい、信州木曾の中山道馬籠(現在の岐阜県中津川市馬籠)生まれした。
1935年、日本ペンクラブを結成し、初代会長に就任しました。
翌1936年(昭和11年)、朝日文化賞を受賞。
1940年(昭和15年)には帝国芸術院会員に選定されました。

『文学界』に参界し、ロマン主義に際した詩人として『若菜集』などを出版しました。
さらに、主な活動を小説に転じたのち、『破戒』や『春』などで代表的な自然主義作家となりました。
作品は他に、日本自然主義文学の到達点とされる『家』、姪との近親姦を告白した『新生』、父である島崎正樹をモデルとした歴史小説の大作『夜明け前』などがあります。

小説『夜明け前』(よあけまえ)

夜明け前は、島崎藤村による2部構成長編小説です。
木曾路はすべて山の中である」の書き出しはご存じの方も多いと思います。

旧家に生まれて国学を学び、役人となるが発狂して座敷牢内で没した藤村の父(島崎正樹)をモデルに明治維新前後の歴史を、当時の資料をふんだんに使い、個人と社会の動向を重層させて描いた小説で、近代日本文学を代表する小説の一つとして評価されています。

概要は、アメリカ海軍のペリー来航の1853年前後から1886年までの幕末・明治維新の激動期を、中山道の宿場町だった信州木曾谷の馬籠宿(現在の岐阜県中津川市馬籠)を舞台に、前述の藤村の父をモデルにしたといわれる主人公・青山半蔵をめぐる人間群像を描き出した藤村晩年の大作です。

小説『破戒』(はかい)

破戒も、島崎藤村の長編小説です。
誰よりも早く自我に目覚めた者の悲しみという藤村自身の苦悩を主人公に仮託しつつ、社会的なテーマを追求した作品とされています。
1905年(明治38年)、小諸時代の最後に本作を起稿し、翌年、緑陰叢書の第1編として自費出版しました。

藤村が小説に転向した最初の作品で、日本自然主義文学の先陣を切りました。
夏目漱石は、『破戒』を「明治の小説としては後世に伝ふべき名篇也」と評価しました。

『千曲川旅情の歌』(ちくまがわりょじょうのうた)

千曲川旅情の歌は、島崎藤村の詩で、この詩に曲を付けた歌曲も有名です。

明治38年(1905年)に発行された「落梅集」が初出といわれています。
同詩集冒頭に収められた『小諸なる古城のほとり』、後半の『千曲川旅情のうた』を、後に藤村自身が自選藤村詩抄にて『千曲川旅情の歌 一、二』として合わせたもので、この詩は「秋風の歌」(若菜集)や「椰子の実」(落梅集)と並んで藤村の秀作とされています。


詩に歌われた小諸城址は、跡地の一隅が懐古園として整備され「小諸なる古城のほとり」の歌碑が建立されています。

小諸なる古城のほとり

小諸なる古城のほとり          
雲白く遊子(いうし)悲しむ
緑なすはこべは萌えず       
若草も藉(し)くによしなし
しろがねの衾(ふすま)の岡辺(おかべ) 
日に溶けて淡雪流る

あたゝかき光はあれど          
野に満つる香(かをり)も知らず
浅くのみ春は霞みて           
麦の色わづかに青し
旅人の群はいくつか           
畠中の道を急ぎぬ

暮行けば浅間も見えず          
歌哀し佐久の草笛(歌哀し)
千曲川いざよふ波の           
岸近き宿にのぼりつ
濁(にご)り酒濁れる飲みて       
草枕しばし慰む

千曲川旅情のうた

昨日またかくてありけり         
今日もまたかくてありなむ
この命なにを齷齪            
明日をのみ思ひわづらふ

いくたびか栄枯の夢の          
消え残る谷に下りて
河波のいざよふ見れば          
砂まじり水巻き帰る

嗚呼古城なにをか語り          
岸の波なにをか答ふ
過し世を静かに思へ           
百年もきのふのごとし(百年もきのふのごとし)

千曲川柳霞みて             
春浅く水流れたり
たゞひとり岩をめぐりて         
この岸に愁を繋ぐ(この岸に愁を繋ぐ)

コメント

タイトルとURLをコピーしました