今日7月10日は「四万六千日(しまんろくせんにち)」です。
7月10日の観音菩薩の縁日。この日参詣(さんけい)すれば四万六千日参詣したと同じ功徳があるといわれています。
平安時代頃より、観世音菩薩の縁日には毎月18日があてられてきましたが、室町時代末期(16世紀半ば)頃から、「功徳日」といわれる縁日が設けられるようになりました。
功徳日とは、その日に参拝すると、100日、1000日分などの功徳が得られるという特別な日です。
功徳日(くどくにち・くどくび)
仏様には色々なご縁日があり、観音様のご縁日は18日、地蔵様のご縁日は24日とか、古くから云われていますが、室町末期以降このほかに功徳日が設けられ、この功徳日にお詣りすると百日に向かうとか、千日に向かうとか、同じ功徳にあずかると云われ、いわば特別デーとして広められてきました。
ちなみに、仏教では、その日参拝すれば、平日の参詣以上の功徳があるとされる日は九十日(2月晦日)、百日(元旦・3月4日・4月18日)、四百日(5月18日・6月18日・10月19日)、四千日(8月24日・9月20日・12月19日)、六千日(11月7日)、または四万六千日(7月10日)などがあります。なお、各寺社により決められていますので、それぞれの寺社にお問い合わせください。
観音様の功徳日で日数の一番多いのが7月10日で、この日にお詣りすると46000日分に相当すると云うことで、江戸時代からこの日のお詣りが盛んになってきました。
46000と云う数については、諸説があり不明ですが、単に多いことと解釈しても差し支えないようです。
いわば仏縁を結ばせる為に考え出された一つの方便と云えましょう。
しだがって、白米一升分は四万六千粒にあたり、この日観音様にお詣りすると、一生を通じて無事息災に過ごすことが出来るとか、四六時(1日)の千日分が四万六千で、これが根拠になったとか、源頼朝が石橋山の合戦に敗れ、源氏ゆかりの将兵を集めて、浅草寺境内に陣したときが7月10日で、その軍勢が四万六千騎あったことからとか、人間の最高寿命を指すとか、色々と云われておりますが、すべて茶飲み話の域を出ません。
縁日
ちなみに縁日とは、神仏の降誕、降臨、示現、誓願などの縁(ゆかり)のある日、すなわち有縁(うえん)の日のことです。
縁日には祭祀や供養が行われ、この日に参詣すると普段以上の御利益があると信じられていました。
特に、年の最初(または月の最初)の縁日を初(はつ)○○(初天神、初観音、初不動など。干支を縁日とする場合は初午、初巳など)と称し、年の最後の縁日を納め(おさめ)の○○または終い(しまい)○○と称されています。
主な縁日(いずれも毎月)
5日 弥勒菩薩
8日または12日 薬師如来
13日 虚空蔵菩薩
14日 普賢菩薩
15日 阿弥陀如来
17日 千手観音菩薩
18日 観世音菩薩
19日 馬頭観音菩薩
20日 十一面観音菩薩
21日 准提観音菩薩
22日 如意輪観音菩薩
23日 勢至菩薩・不空羂索観音菩薩・八幡神
24日 地蔵菩薩
25日 文殊菩薩・天神
28日 大日如来・不動明王
30日 釈迦如来
浅草・浅草寺 ほうずき市
功徳日で有名なのが浅草の浅草寺ではないでしょうか。
浅草・浅草寺では、この日に参詣した者には46000日参詣したのと同じご利益や功徳があるとされています。
本来は7月10日だけですが、9日から行われる「ほおずき市」に合わせて9日にも法要が行われています。
その浅草寺境内を彩るほおずきの屋台は、浅草の夏の風物詩ともなっています。
この日の参拝は江戸時代(元禄時代)には定着し、われ先に参拝しようという気持ちから、前日9日から境内は参拝者で賑わうようになりました。
そのため、9日、10日の両日が縁日とされ、現在に至っているそうです。
前述の「ほおずき市」の起源は、明和年間(1764~72)とされています。
四万六千日の縁日は浅草寺にならって他の寺社でも行なわれるようになりました。その際に、愛宕神社で「ほおずき市」がたったそうです。
「ほおずきの実を水で鵜呑み(丸飲み)すれば、大人は癪(なかなか治らない持病)を切り、子供は虫気(腹の中にいると考えられた虫による腹痛など)を去る」という民間信仰もあり、ほおずきを求める人で賑わったそうです。
その愛宕神社のほおずき市の影響を受け、四万六千日の大元である浅草寺にもほおずき市が立ちました。
ちょうどお盆の季節でもあり、ほおずきを盆棚飾りに用いる方も多いとか。
かつては、四万六千日の縁日に赤とうもろこしを売る屋台もありました。
これは赤とうもろこしが落雷除けのお守りになるという、民間信仰により、文化年間(1804~18)頃に境内で売られるようになったと伝わります。
ところが明治初年(1868年)頃、不作によって赤とうもろこしが出回らないことがあり、これに困ったご信徒が浅草寺に雷除けのお守りを求めた縁から、浅草寺では竹串に挟んだ三角形の守護札を授与するようになったそうです。これが今でも四万六千日に授与されている雷除札です。
9日、10日の両日、いなせな恰好の売り子たちが声をあげてほおずきを売り、境内は朝から晩まで参拝者で埋まります。観世音菩薩の功徳に感謝して参拝し、ほおずき市を散策して江戸情緒を味わいたいものです。
コメント